イヌは私たちが最も古くから共生する動物であり、今日では700種以上の犬種が存在します。
一方で、人類がいつ、どこで、どのようにイヌの家畜化を始めたかは定かでありません。
科学者の国際研究チームはこのほど、古代イヌ27種のDNAを分析したところ、最終氷期の終わり頃、約1万1000年前にはすでに5種類の犬種が存在したことを特定しました。
さらに、犬種の多様化は人類の移動と深い繋がりがあったようです。
研究は、イギリスのフランシス・クリック研究所、オックスフォード大学、オーストリア・ウィーン大学らが参加し、10月30日付けで『Journal Science』に掲載されました。
現代のイヌはすべて「5タイプの犬種」に起源を持つ
研究チームは、古代イヌ27種の骨からDNAを採取し、ゲノム配列を決定した結果、1万1000年前までに存在した5タイプの犬種を特定しました。
以下がその名称と分布場所です。
・ネオリシック・レヴァント(今日のイスラエル、ヨルダン、パレスチナ)
・メソリシック・カレリア(今日のロシア)
・メソリシック・バイカル(今日のシベリア)
・エンシェント・アメリカ(今日の北アメリカ)
・ニューギニア・シンギングドッグ(今日のニューギニア島)
研究主任のポントス・スコグランド氏は「イヌは、最終氷期の終わり頃には北半球全土に広がっていましたが、それらはこの5種に集約されるはずです。現代の犬種はすべて、この5種の進化および交配によって誕生したでしょう」と指摘しています。
また、5種をさかのぼれば、特定のオオカミにたどり着くと見られます。
この発見は、犬種の多様化の始まりが、人類がまだ狩猟採集者だった頃に起源を持つことを示唆しています。
それでは、5タイプのイヌはどのように多様化していったのでしょうか。
イヌの多様化は”人類の移動”と連動していた
研究チームは、イヌの多様化の追跡にも成功しています。
例えば、ヨーロッパに分布した初期のイヌは、遺伝的に2つの起源を持ち、1つは中近東、もう1つはシベリアの犬種に由来していました。
しかし、2つの遺伝子はある時点で失われたらしく、今日のヨーロッパ犬には存在しません。
同チームは、ヨーロッパ犬の遺伝的変化に人が関係していると予想し、古代イヌと古代人のデータを比較しました。
その結果、イヌの多様化および移動は人類の移動と密接に連動していたことが発見されたのです。
最終氷期以降、人類はイヌをパートナーとして引きつれ、世界各地に移動し、それとともに犬種も多様化したのでしょう。
同チームのグレガー・ラーソン氏は「イヌは私たちの最も古くて身近なパートナーです。今後も古代イヌのDNAを調べることで、人類との共生関係がいつどこで始まったのかを知ることができるでしょう」と話しました。
5種しかいなかったイヌが過去1万年間で700種にまで増えた裏には、やはり人の動きが関係していたのです。
提供元・ナゾロジー
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