およそ20〜30万年前に出現したホモ・サピエンスは、今日まで現存する唯一の人種です。
ネアンデルタールやデニソワ人は数万年前に絶滅し、それからは私たち現生人類しかいません。
しかし今回、カリフォルニア大学サンタクルーズ校（University of California, Santa Cruz）の研究により、ホモ・サピエンスに特有のDNAは、ゲノム全体の1.5〜7%に過ぎないことが明らかになりました。
あとはすべて、絶滅した祖先やいとこのDNAで構成されていたようです。
研究は、7月16日付けで『Science Advances』に掲載されています。
現代人のゲノムの大半は「絶滅人種」のもの
本研究では、世界各国から選ばれた279人の被験者と、絶滅したネアンデルタール人とデニソワ人の化石からDNAを抽出し、「集団ゲノミクス」を行いました。
集団ゲノムを解析することで、各種に特有のDNAの割合や、進化の歴史を追うことが可能です。
チームは、この集団ゲノムを用いて、それぞれのDNAが、ネアンデルタール人やデニソワ人のものなのか、あるいは絶滅した祖先か、それらの混合種のものなのかを分析。
他の人種のDNAを取り除いたあと、現生人類に特有のゲノム領域を探しました。
その結果、ホモ・サピエンス特有のDNAは、ゲノム全体の1.5%〜7%にまで減少すると判明したのです。
しかしこの結果は、他のゲノムのほとんどが、ネアンデルタールやデニソワ人のDNAからなることを意味しはしません。
たとえば、サハラ以南のアフリカ人が受け継いでいるネアンデルタール人のDNAは、平均して0.096〜0.46%。
アフリカ以外の人々は、より多くのDNAを受け継いでいますが、それでも平均して0.73〜1.3%ほどです。デニソワ人になると、もっと少なくなります。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校（University of California, San Francisco）のネイサン・シェーファー氏は「残りのゲノムの大部分は、現生人類と絶滅した近縁種の共通祖先から伝えられたものです。
今回の結果は、その謎に包まれた先祖の遺伝的影響がどれだけ強いかを示している」と説明します。
また集団ゲノムの分析から、ホモ・サピエンス特有の遺伝子改変は、約60万年前と約20万年前の2回の進化の過程で生じた可能性が高い、と示唆されました。
60万年前といえば、ホモ・サピエンスとネアンデルタールがそれぞれ別系統に分岐した頃のことです。
シェーファー氏は「異人種間の交配はおそらく何度も起こっているので、その度にDNAの改変があったと考えられるでしょう」と指摘。
その上で「1.5〜7%という数字は今後さらに小さくなるかもしれない」と言います。
というのも、絶滅した人種のDNA解析が進めば、ホモ・サピエンスにしかないとされるDNAが、ネアンデルタールやデニソワ人にも見つかる可能性があるのです。
そうなると、私たちに特有の遺伝子領域はより小さくなるでしょう。
研究チームは今後、このわずかな遺伝子領域が、現生人類の行動や認知機能に与えた影響を調べていく予定です。
参考文献
Only a tiny fraction of our DNA is uniquely human
Just 7% of our DNA is unique to modern humans, study shows
元論文
An ancestral recombination graph of human, Neanderthal, and Denisovan genomes
提供元・ナゾロジー
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