Point
■反社会的な性格の持ち主が、信頼が必要とされる状況でどう振る舞うのかが調査された
■そうした性格の持ち主は、裏切ったら「制裁」があるといった共通認識のもとでのみ相手を信頼する傾向があった
■反社会的な組織であれ、そうした共通認識が組織としての基盤を強固にしていることが考えられる
コワいお兄さんたちの信頼は条件付きのようだ。
この世は信頼がないと成り立たない。人間が構成する社会は信頼によって成り立っている部分が多く、疑ってばかりでは身が持たないだろう。
しかし、そうした信頼が要求される世の中で、裏社会を闊歩する反社会的な人々はどのようにふるまっているのだろうか。アムステル大学などの行動経済学者や社会心理学者の研究チームがメスを入れた。研究は2019年6月11日付で「PNAS」に掲載されている。
On the psychology and economics of antisocial personality
ポイントは「制裁」の有無
研究では、反社会的な人々はほとんど他者を信頼していないことが明らかになった。納得の結果だろう。
しかし裏切った者に対する「制裁」がある場合は別だ。制裁が存在する場合、彼らは信頼を裏切った行為に対して情け容赦ない罰を下すことができる。
言いかえれば、彼らはそうした制裁の可能性を感じないシチュエーションでは、平気で他者を裏切ることができるということだ。
研究ではまず、一連の性格テストにより被験者から反社会的な人物像を持つ者が抽出された。そうした性格は、目的のためには手段を選ばないマキャヴェリズムや 共感能力の欠如などの特徴につながるものとされた。
そして、そうした性格と「信頼や信用が要求されるシチュエーション」との関連を調査したところ、反社会的な人物像を持つ人々は、先に述べたような条件付きであれば他者を信頼するような態度が目立っていたという。
共通認識が組織を強くする
要は、反社会的な人々の性格は制裁の有無によって変化するというわけだ。
そして構成員がそうした態度を統一することで、反社会的な組織が成り立ち、大きな報酬を得るような活動が成立しているといえる。
つまり、構成員が他の構成員と「裏切ったら分かってるよな?」といった暗黙のセリフを共有しているのであり、こうした共通認識が組織のつながりを一層強固にしているのだ。
だとすれば、反社会的な世界ではそうした「裏の共通認識」を理解できる能力がないと生きてはいけない。そう考えると、反社会的な世界では、ある意味では他者の気持ちを推し測る能力として知られる心の理論が、十分に発達していないとやっていけないのだろう。
そうした能力は「コミュニケーション能力」と言い換えてもいいかもしれない。コミュニケーションが希薄になっていく世の中で、この能力がある者がますます重宝されているようだが、それは「裏社会」であっても例外ではないのだ。
提供元・ナゾロジー
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