Point
■学童、大学生、心理カウンセラーを対象にした「励ましの言葉」の評価付けテストでは、共通して評価の高い言葉はなかった
■評価の基準は、観察者の性格特性に大きく依存しており、どのテストでも性格の数だけばらつきが見られた
悲しんでいる人に対してなんと声をかけてあげれば元気づけられるのか、途方に暮れますよね。
もし間違った言葉をかけてしまうと事態がより悪化してしまうこともあります。そんなとき、落ち込んでいる人をだれでも一発で立ち直るような一言でもあれば苦労しませんが、残念ながらそのような魔法の言葉は存在しないようです。
ウェイン州立大学のショウナ・タナー氏とその研究チームの発表は、私たちにはそれぞれ異なる性格があるため、共通して元気づける励ましの言葉はないと主張しています。研究は「Basic and Applied Social Psychology」に掲載されています。
What is the Right Thing to Say? Agreement among Perceivers on the Supportiveness of Statements
10〜15歳で調査、共通性なし
タナー氏の研究チームは、学童と大学生、それから心理セラピストを対象に、共通して有効な「励ましの言葉」はあるのか調査しました。
10〜15歳の学童300人近くが参加し、相手を元気づける6つの異なる励ましの言葉について評価付けをしました。
状況は、「テストの点が低かった」「遠足のグループから仲間外れにされた」という理由で落ち込んでいる相手にかけるという設定です。
励ましの言葉には、相手に同情したり、楽観的に考えるように言ったり、深刻な状況を和らげたりする言葉が含まれています。
すると、評価付けを行った子供たちの間に共通して高い評価が得られた言葉はなく、ばらつきが見られました。この結果は、子供たち自身の性格傾向に強く影響されていることが示唆されています。
大学生でも結果にばらつき
このデータをもとに、大学生を対象に新たな研究も行われました。54人の大学生が、いくつかの異なる状況における96の励ましの言葉を評価。言葉の例は、ある性格特性を示す学生にはより強く訴えかけるようにわざと作ってあります。
例えば、「物事はなんでも最後はうまくいく」といった言葉は、楽観主義的な性格には強く働きかけるし、「友だちが君のことを気に入っていたから、僕たちと一緒に遊ばないか」といった言葉は仲間意識の強い学生に効果的でしょう。
評価付けの結果は、研究チームの予想したとおり、個人の性格特性と結びついており、ひとつの言葉に評価が一致することはありませんでした。
さらに研究チームは、調査の信頼性を高めるために、心理セラピスト33人を対象に心理カウンセリングの映像を見せて、励ましの言葉の評価付けを行っています。それでもやはり結果は同じで、評価基準は観察者の個性に大きく依存することが判明しています。
どんな言葉が助けになるのか、誰が最も頼りになるのかは、当たり前のことかもしれませんが人によりけりです。万人を元気づけるような共通の言葉はありません。悲しんでいる人を無理に励まそうとすること逆効果です。そんなときは、だまって側にいてあげることが、最良の支えとなるでしょう。
提供元・ナゾロジー
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