そして次期型VCターボ

そして現状のVCターボエンジンをさらに進化させ、次期型が開発されている。そこには2通りの制御があり、ひとつは従来のVCターボをより高効率化したもの、そしてもうひとつがe-POWER向けに開発したユニットになる。

日産 次期e-POWER用に可変圧縮比のVCターボエンジンを採用
(画像=第2世代のVCターボを搭載するローグ、『AUTO PROVE』より引用)

今回はe-POWER用に開発したエンジンの実機はなく、進化型ユニットには試乗することができた。まず、進化型VCターボは3気筒1.5Lとなり、出力は204ps/31.1kg-mで、V6型3.0L並みとなっている。第2世代となったVCターボは新型ローグに搭載されている。

日産 次期e-POWER用に可変圧縮比のVCターボエンジンを採用
(画像=第2世代のVCターボの構成、『AUTO PROVE』より引用)

進化したポイントは大量EGRを採用している点だ。圧縮比は従来と同じ8〜14の間で可変しクールドEGRを約20%使用する環境性能を持たせている。一般的に過給域ではEGR量が少なくなるが、アドミッションバルブというスロットルチャンバーを使うことで、過給域でもEGRを供給することが可能になっている。EGR率20%という高い使用比率にすることで、低負荷時でもスロットル開度を大きくし、ポンピング損失を最小化している。もちろん、高速燃焼というトレンドも盛り込んでおり、NOxやPMといった排気ガスクリーンに対応しているのは言うまでもない。

日産 次期e-POWER用に可変圧縮比のVCターボエンジンを採用
(画像=第2世代のVCのターボ主要技術、『AUTO PROVE』より引用)

EGRの採用に際しレイアウトは、吸気口→エアクリーナー→アドミッションバルブ→ターボコンプレッサー→インタークラー→エンジンという順番で、EGRはタービン直後の触媒のあとから取り出してコンプレッサーの上流に戻しているので、過給域でもEGRはかかるというわけだ。

こうした仕様で第2世代はまもなくデビューする。そしてe-POWER向けのVCターボの詳細は今回明らかにされていないが、新型1.5LのVCターボユニットとは異なる制御となり、現行のe-POWER用エンジンをより高効率化し、電池の充電状況がよい時には高圧縮で、高効率で運転し、そして充電が急務になる状況では低圧縮で過給し出力を稼ぐという運転ロジックで制御さたエンジンとしてデビューする。

じつは、日産は2021年2月に次期型e-POWER用エンジンの概要説明を行ないSTARC燃焼技術を搭載したガソリンエンジンの開発を発表しているが、実用までにはもう少し時間がかかるということなのだろう。この第2世代のe-POWER用VCターボエンジンには、まだSTARC燃焼技術は採用されていないものの、部分的には採用し、今後の知見を積み重ねて実用化というロードマップだと想像する。

さて、VCターボの概要をお伝えしたが、実際に乗ってみてどうなのかもお伝えしておこう。

試乗車は2019年に北米・中国で発売しているアルティマで、Dセグメントサイズのセダン。トヨタ・カムリ、ホンダ・アコードがライバルになる位置づけだ。こちらはレギュラー仕様のVCターボエンジンを搭載しCVTが組み合わされている。レッドゾーンは6500rpmであの3つのリンクシステムが高速で回転するイメージを持ちながら試乗した。

2.0L 4気筒ターボで低回転からトルクのある走りができる。エンジン音は6気筒とは違う音でやや太めの音。意外とスポーティなサウンドである点も美点と言えるだろう。3000rpmを超えるとかなりスポーティな走行が可能で、CVTのメリット活かし高回転を維持するとワインディングが楽しくなるようなレスポンスのいいエンジンという印象だった。

そしてハイオク仕様は新型QX55に試乗した。200kW/390Nmというスペックで、目標はV6型3.5L並みとしているが、はるかに凌駕できるレベルに到達している。こちらはアルティマとガソリンの仕様が異なるだけなのだが、エンジン音の印象は少し乾いた音を感じる。車型や車格の違いから静音や吸音といった装備の違いがあるため、単体での比較は難しいが、いずれも心地よいサウンドという印象だった。このインフィニティQX55はアウディQ5やBMW X3とライバル関係にポジションしているので、高級感といった要素もエンジンには求められているということだ。

そして第2世代のVCのターボの試乗車は新型ローグに搭載されていた。こちらは1.5Lターボで3気筒になり、開発目標はV6型3.0L並の出力だが、こちらもそれ以上のパワー感がある走りはできる。特にスポーツモードを選択するとエンジン音が変わり力強さをより感じられるのだ。メーターには圧縮比メーターや過給圧が表示されていたが、正確には読み取れなかったが1.5Barほどの過給が行なわれていたと思う。

つい先ごろEU政府から2035年にICE搭載モデルの販売禁止ということが発表されたが、まだまだICEを必要とする国々は多くあり、また電源構成自体がEU内でも整備できていないこともあり、このまま実施されるか不透明だ。そうしたヒステリックにも思える政策が振りかざされるが、日産はしっかりICEの開発も並行して電動化を進めているということなのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

提供・AUTO PROVE

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