新型コロナウイルスの影響は、学問界にも及んでいます。
ロックダウン中のイギリスでは、考古学遺跡の発掘作業が各地で停止されています。
しかし、そんな中、アマチュアの調査員により、古代ローマ時代の遺跡がイングランド南西端で発見されました。
今回の調査は、現地でのフィールドワークではなく、自宅でのリモートワークで行われたとのことです。
予想以上の成果が上がる
本調査は、「Understanding Landscapes」というプロジェクトの一環であり、一般のボランティアを募って作業されます。
普段はフィールドワークも兼ねているのですが、今回はリモートワークのみでの作業となり、8名が参加しました。
調査対象となったのは、デヴォン州とコーンウォール州の間にある「テイマー渓谷」です。
具体的な調査方法は、上空から撮影した同地の画像をスキャニングし、詳細な地形マップを作成します。
その範囲は4000平方キロにおよび、それを1000の区画に分割して、ボランティアの方に割り当てます。
ボランティアは、同地に関する考古学的記録や過去の地図と照らし合わせながら、担当の区画に隠れた遺跡がないかどうかを入念にチェックします。
その結果、BC300〜AD300年の間に建造されたとされるローマ時代の遺跡や集落が数十件も発見されたのです。
プロジェクトを担当するイングランド・エクセター大学のクリス・スマート博士は「何かは見つかると予想してましたが、まさかこれほど多くの発見があるとは思ってもいませんでした」と驚きを隠せない様子。
「まだ調査は継続中ですが、全体の作業が終わる頃には、数百ほどの遺跡が見つかっているかもしれません。従来の仮説とは違い、この地は非常に人が多く、繁栄していたと考えられます」と述べました。
また、集落同士を結ぶ道路も見つかっています。
上の画像の赤矢印で示した薄い線が道路で、青矢印で示した黒点は、道路の材料を入手するための採石場です。
スマート博士は「この道路は、古代ローマ時代に主要な軍事施設を結んでいたものと思われます。今夏に予定されていた同地での発掘作業が中止されたのは残念ですが、ロックダウンが解除された暁には、ボランティアの方とともに作業を再開したい」と話します。
ボランティアに参加した元看護師のフラン・スパリングさん(64)は「探索調査にはとても夢中になりました。私たちは、人工的に見える痕跡が見つかれば、スマート氏に逐一報告します。今のところ、古代ローマ時代の道路と円状の囲いを見つけました。私自身も長い間この近くに住んでいますが、当時は今よりずっと忙しない場所だったのかもしれません」と話しています。
reference: theguardian / written by くらのすけ
提供元・ナゾロジー
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