目と眉が描かれた頭巾をかぶり、足だけが見えている奇妙な姿。
これは「メジェド(Medjed)」という古代エジプト神の一人です。
数年前から日本で人気に火がつき、今やアニメや携帯ゲーム、LINEスタンプなどに引っ張りだことなっています。
日本での人気を受け、11月10日シカゴ大学のOriental Instituteがメジェドの正体に関する講義をYoutubeに公開しました(英語)。
このメジェド神、そもそもどんな存在なのでしょうか。
『死者の書』に登場するメジェドの正体とは
メジェドが発見されたのは、古代エジプトに伝わる『死者の書』の中です。
全長37メートルもあり、「グリーンフィールド・パピルス」という名でも知られています。
本書は、BC950〜930年頃の「エジプト第3中間期」に、当時の女性神官ネシタネベトイシェルウのために書かれました。
その第17章に登場したメジェドの初々しい姿がこちらです。

数多いるエジプト神の中でも特に風変わりでユニークな見た目をしていますが、わかっていることは多くありません。
残されたテキストを解読すると、名前はアルファベット表記で「メジェド(Medjed)」となり、「打ち倒す者、攻撃する者」といった意味になります。

他にわかっているのは、「オシリス神の家にいること」「姿は見えず、目から何かを発射すること」「火を吐くこと」くらいです。
『死者の書』は、肉体を離れた魂が死後の楽園にたどり着くまでのプロセスを書いたもので、その中には、死者の裁判をする冥界の神・オシリスも登場します。
名前や文章の意味から、メジェドはおそらく、オシリスの敵を目ビームで排除する守護者の役割を持つのだと推測されています。
しかし、それ以外は何もわかっていない謎の神様です。

メジェドの見た目にパターンがある?
メジェドはこの他にいくつかのテキストの中に登場し、その姿にも色々なパターンがあります。
代表的なものを見てみましょう。



先ほどのメジェドより頭巾の丈が短く、足が長く露出して、ハチマキのようなものが巻かれています。
専門家によっては「頭巾ではなく、鉄の寸胴のようなもの」という説がありますが、やはり『死者の書』に出てくるメジェドが一番オーソドックスでしょう。
日本でのメジェド人気は美術展がきっかけ
日本人にメジェドが広く知られるようになったのは、2012年に東京・福岡で開催された「大英博物館 古代エジプト展」と言われます。

この美術展で『死者の書』が日本で初めて一般公開され、メジェドを見つけた人がネットで紹介したのがきっかけだそう。
ここからメジェド人気に火がつき、アニメ化やゲームを通して一般層に浸透していきました。


ちなみに、現地エジプトでメジェドを知っている一般人はめったにおらず、知名度はかなり低いそうです。
見た目のシンプルなB級感が、ゆるキャラ好きの日本人にはたまらないのかもしれません。
参考文献
The Oriental Institute
提供元・ナゾロジー
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