300年以上も未開封のままだった手紙が、ついにバーチャル上で開封されました。
クイーンメリー大学(イギリス)を中心とする国際研究チームは、歯科用のX線スキャナーと、バーチャル開封(virtual unfolding)という技術を用いて、17世紀の手紙を調査。
世界で初めて、手紙に一切手を触れず内容を明らかにすることに成功しました。
研究は、3月2日付けで『Nature Communications』に掲載されています。
折りたたまれた手紙をバーチャル上で開封!
調査された手紙は、オランダの美術館に所蔵されている17世紀の未配達の手紙を集めたトランクの中から選ばれたものです。
手紙は封筒を使っておらず、一枚の紙を独自の方法で何重にも折りたたむことで密封されていました。
これは13世紀の西洋に起源をもつ「レターロッキング」という手法です。
封筒が流通するまでは、これが一般的な密封方法でした。
ちなみに、こちらがレターロッキングの方法です。
ヨーロッパの歴史映画などで見たことがあるかもしれません。
レターロッキングの手紙は直接開封して読むしかなく、そのせいで歴史的文書を損傷させることもよくありました。
そこでチームは、手紙を傷つけないよう、歯科用に開発された「X線マイクロトモグラフィ・スキャナー」を使用。
研究主任のグラハム・デイビス氏は「このX線スキャナーは、歯のミネラル含有量を前例のない感度で検出するよう私たちが設計したものです。
しかし、それによって、古紙や羊皮紙に含まれるインクも詳細なレベルで調べることが可能になりました」と話します。
同チームのデヴィッド・ミルズ氏は「医療用CTスキャナーに似ているが、より強力なX線を使っているので、インク中に含まれる微量の金属の痕跡すらも検出できる」と付け加えます。
チームは、手紙を折りたたんだ状態でスキャンし、各層に印字された文字を画像に変換。
続いて、コンピュータアルゴリズムをそれらのスキャン画像に適用し、折りたたまれた各層を識別、分解して、バーチャル上に展開しました。
そうして完成したのがこちらです。
結果、手紙は1697年7月31日付けで、フランス人のジャック・セナケスという人物が書いたものと判明しました。
内容は、彼が従兄弟のピエール・ル・ペールに向けて、ダニエル・ル・ペールという男性の死亡届の証明書を送るよう頼んだものでした。
この手紙は、17世紀のヨーロッパにおける一般市民の生活について興味深い示唆を与えてくれます。
今回、X線スキャンとバーチャル開封の両技術が、非侵略的な走査法として確率されたことで、未開封文書の調査が促進されるかもしれません。
参考文献
Secrets of Unopened Letter From Renaissance Europe Revealed – Without Breaking Its Seal or Damaging It
Researchers virtually open and read sealed historic letters
提供元・ナゾロジー
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