タンパク質の摂取は筋量の維持と増加に欠かせません。

そして最近の研究によって、筋量増加には1日の摂取量だけでなくタイミングも関係すると判明しました。

長崎大学医歯薬学総合研究科神経機能学の青山 晋也(あおやま しんや)助教、および早稲田大学理工学術院の柴田 重信(しばた しげのぶ)教授ら研究チームが、朝のタンパク質摂取が筋量増加に効果的だと発表したのです。

研究の詳細は、7月6日付の科学誌『Cell Reports』に掲載されました。

目次

  1. 筋肉を増やしたいなら朝に多くのタンパク質を摂取すべき!
  2. 朝食による筋量増加は体内時計を介して引き起こされる

筋肉を増やしたいなら朝に多くのタンパク質を摂取すべき!

現在、多くの国では朝・昼・夕食といった3食の中でタンパク質の摂取量に偏りがあります。

その中でも特に朝食におけるタンパク質摂取量は少ないと言われています。

そこで研究チームは、マウスを用いた動物実験で、タンパク摂取量の偏りと筋量増加の関係性を調査しました。

実験では、マウスを1日2食「朝食(起床後)・夕食(就寝前)」の条件下で飼育。

1日の総タンパク質摂取量は変えず、①朝食タンパク質多め、②均等、③夕食タンパク質多め の3グループで筋量増加率に違いがあるか調べました。

筋肉にも体内時計があると判明! タンパク質摂取がもっとも効果的なのは「朝」
(画像=朝食にタンパク質を多く摂取すると筋量増加しやすい / Credit:柴田 重信(早稲田大学)_体内時計に合わせた朝のタンパク質摂取タイミングが筋量増加に効果的(2021)、『ナゾロジー』より引用)

その結果、最も筋量増加したのは、朝食にタンパク質を多く摂ったグループ①でした。

逆に夕食にタンパク質を多く摂ったグループ③では、筋量増加率が最も低くなりました。

また追加研究によって、朝食の筋量増加には分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)の摂取が大きな役割を果たしていると判明。

では、なぜ朝にタンパク質を摂取することが効果的な筋量増加につながったのでしょうか?

朝食による筋量増加は体内時計を介して引き起こされる

続いてチームは、朝食タンパク質の筋量増加メカニズムを解明するため、生理機能や昼夜のリズムを制御する「数十種類の時計遺伝子」に着目しました。

そしてその働きを確認するため、「時計遺伝子の変異により、体内時計が乱れたマウス」や「筋肉の時計遺伝子を欠損させたマウス」の筋量増加率を調査。

筋肉にも体内時計があると判明! タンパク質摂取がもっとも効果的なのは「朝」
(画像=体内時計機能不全のマウスは朝食の筋量増加効果が見られなかった / Credit:柴田 重信(早稲田大学)_体内時計に合わせた朝のタンパク質摂取タイミングが筋量増加に効果的(2021)、『ナゾロジー』より引用)

その結果、時計遺伝子が変異・欠損したマウスは、朝食による筋量増加効果が得られませんでした。

つまり朝食における筋量増加効果には、「筋肉の体内時計」が関わっていたのです。

筋量を効果的に増加させたいなら、単に朝食でタンパク質を多く摂取するだけでなく、体内時計を整えている必要があります。

夜勤勤務やシフトワーク、朝食欠食など体内時計を乱すような生活習慣では、朝食の恩恵を受けにくいのです。

また高齢女性を対象にした調査では、朝食でタンパク質を多く摂取している人の骨格筋指数や握力が高いと分かっています。

筋力や筋量が低下しやすい高齢者は、規則正しい生活とタンパク質を豊富に含んだ朝食を大切にすると良いでしょう。

今後研究チームは、ヒトを対象にした研究で有効性を評価する予定です。


参考文献

筋量増加に効果的なタンパク質摂取タイミング 体内時計に合わせた朝のタンパク質摂取タイミングが筋量増加に効果的

元論文

Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock


提供元・ナゾロジー

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