今回は視点を変えてGMTマスター II の象徴である2色に色分けされた、俗にいう “ツートンベゼル”について着目してみたい。
ほとんどの方はおわかりだと思うが、まずはこのツートンベゼルがなぜGMTマスターに採用されたのかについて簡単に触れておく。
このGMTマスターだが当時のパン・アメリカン航空からの要請で開発された。最初に発表された1955年といえば国際線の航路も広がり、大型ジェット旅客機時代を迎えようとしていたころだ。当然、時差のある国と国の間を往き来することが増えることから、パイロットはその二つの国の時刻を同時に把握する必要が出てくる。そこで時分針とは別にもうひとつの時刻を指し示すための副時針(GMT針)を設けて開発された。
この副時針は24時間で1周し、ベゼル上に設けられた数字を指し示して時刻を知らせる。つまり、その時刻が昼なのか夜なのかを感覚的に判断できるようにと、ベゼルの色を夜の時間帯を「青」、昼の時間帯を「赤」に色分けされたというわけだ。
さて、GMTマスターがフルモデルチェンジを実施し、ベゼルのインサート(目盛りがある部分)の素材が、それまでのアルミニウムからセラミックに変更されたのが2005年(ゴールドモデル)のこと。スチールモデルはその2年後にリリースされた。ただ当初は黒の単色ベゼルのみで、ツートンベゼルは存在しなかったのである。
そして、ツートンベゼルの黒青タイプが初めて登場したのはフルモデルチェンジから8年後の2013年だった。ではなぜ8年も後になったのだろうか。
公式に詳細は発表はされていなかったように思うが、当時言われていたことはロレックスはセラミック素材のモノブロックインサートを独自に開発し、それを多色成形で2色を再現することにこだわったことが背景にあったようだ。これは高度な技術をもつロレックスといえども技術的にかなり難しかったようで、この問題を克服するための研究と開発に多くの時間を要したということだった。素人目には、それぞれの色のインサートを別々に成形して合わせたほうが早いような気がするのだが…。
しかも、モデルチェンジされた8年前に開発に着手したとは考えにくい。だとすれば実現するまでに要した時間はそれ以上なのではないか。ベゼルにこれだけの開発期間と恐らくは膨大な費用がかけられているのだろう。なんともすごい話である。
実機を見るとわかるが、色の境目が近くで見ると綺麗に分かれているのに、遠目で見ると自然に変わるようにも見えるのは、まさにその賜物と言えるのかもしれない。
文・菊地 吉正/提供元・Watch LIFE NEWS
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