住宅ローンの返済額や借入可能額は、ウェブサイトやスマホの計算アプリを使えば簡単にシミュレーションできる。住宅ローン計算アプリの提供元は公的機関もあれば民間企業もあり、主な機能はほぼ共通している。代表的な住宅ローン計算アプリを参考に何ができるかを解説する。

住宅ローンの計算アプリでできる3つのこと

住宅ローンの計算アプリはどこのものを使用しても基本機能は変わらない。主にシミュレーションできる場面は、新規借り入れ、借り換え、繰り上げ返済の3つだ。

1……住宅ローンの新規借り入れのシミュレーション

住宅ローンの新規借り入れを検討する時には金融機関にシミュレーションしてもらうことも多いが、計算アプリでも知りたいことはおおよそ把握できる。新規借り入れで主に試算できるのは3つだ。

(1)現在の年収から借入可能額を調べる
(2)借入金額から毎月の返済額を調べる
(3)毎月の返済額から借入可能額を調べる

これから物件を探し始める人は、まず(1)のシミュレーションで自分がどれだけ借り入れできるのかチェックしてみよう。結果をもとに(2)で毎月の返済額を試算し、負担のない金額かを確認する。通常は(1)の借入可能額をそのまま入力すると過大な住宅ローンになるため、自分で調整して(3)の毎月の返済額から借入可能額のシミュレーションも可能だ。

借入可能額については試算結果に上限のある住宅ローン計算アプリもあるため、その場合はほかの計算アプリを利用しよう。シミュレーション条件は自分でも入力できるが、金融機関の提供する計算アプリならその時点の金利を直接選んで試算できるところもある。

2……住宅ローンの借り換えのシミュレーション

住宅ローンの計算アプリでは借り換えシミュレーションもできる。試算できるのは、住宅ローンを借り換えた場合にどのくらいメリットがあるのかだ。

借り換えシミュレーションでは現在の借入条件に加え、借り換え後の住宅ローン条件の入力が必須なので、必要な情報は事前に入手しておきたい。金融機関によって異なる入力項目は、商品タイプや金利などだ。情報を集めるのが面倒であれば、条件を選択して試算できる金融機関の住宅ローン計算アプリを使うといいかもしれない。

3……住宅ローンの繰り上げ返済のシミュレーション

住宅ローンの繰り上げ返済も計算アプリでシミュレーション可能だ。主に繰り上げ返済前後の総返済額や返済期間の違いを試算できる。多くの計算アプリでは繰り上げ返済したい金額を入力する。細かい条件を入力できるものだと、短縮したい返済期間や繰り上げ返済後の毎月返済額などからもシミュレーションできるアプリもある。

ただし繰り上げ返済はその金融機関の契約者が行うものであり、誰でも使える住宅ローン計算アプリでは提供していないこともある。ただし住宅ローンの契約者専用サイトだとシミュレーションできることもあるので、まずは借り入れしている金融機関をチェックしよう。

住宅ローンの計算アプリでは手数料が加味されていないこともある

住宅ローンの計算アプリは設定できる項目の細かさや使いやすさの差はあるが、試算条件が同じなら結果に大きな違いはない。注意したいのは手数料である。

計算アプリでは借入可能額や借り換え後の総返済額のみが表示され、それにかかる手数料は表示されていないことも多い。借り入れする側も金利や返済額のみに目を向けがちになってしまうが、手数料を含めた試算が大切であることは意識しておきたい。

無料で利用できる住宅ローンの計算アプリは3種類

ウェブ検索をすれば多数の住宅ローン計算アプリがヒットするが、大きくは3種類に分けられる。それぞれの計算アプリの特徴を見てみよう。

(1)公的機関の住宅ローン計算アプリ

公的機関の住宅ローン計算アプリとしてよく知られているのは、フラット35を提供する「住宅金融支援機構」や金融庁の「知るぽると」というサイトで提供されているものだ。

住宅金融支援機構の計算アプリでは、新規借り入れ、借り換え、繰り上げ返済のシミュレーションができる。一方の知るぽるとでは新規借り入れと繰り上げ返済のみ対応している。

知るぽるとは住宅ローンのことに限らずお金の情報をやさしく伝えるサイトでもある。そのため年収から借入可能額が試算できないなど、入力項目が簡易的である。その点、住宅金融支援機構の計算アプリは試算内容によって返済プランの比較などもできる。

知るぽるとのほうが簡易的で分かりやすいが、細かいシミュレーションがしやすいのは住宅金融支援機構のほうだ。住宅ローンの試算が目的なら、住宅関係に特化している住宅金融支援機構の計算アプリを利用するといいかもしれない。

(2)民間不動産サイトの住宅ローン計算アプリ

住宅に関する情報を発信している民間不動産サイトの計算アプリでも住宅ローンのシミュレーションができる。代表的なサイトには、「スーモ(SUUMO)」、「ライフルホームズ(LIFULL  HOME'S)」、「スマイティ」などがある。

これらのサイトはリクルートやカカクコムなど大手企業が運営しているだけあって、見やすかったり特徴的だったりする。

例えば、スマイティのサイトでは借入額を入力することで     住宅ローンを一覧比較できる機能がある。一覧比較では分からないこともあるため、最終的には自分で確認する必要はあるが、どんな住宅ローンがあるのかなどの参考に役立つ。

民間不動産サイトの住宅ローンの計算アプリには注意点もある。これらは不動産販売につなげるための導線でもあるため、細かい試算まではできない。シミュレーションができるのも、新規借り入れに関することがほとんどである。民間不動産サイトの住宅ローン計算アプリを利用するなら、住宅購入の検討当初にどのくらい借りられるのかを調べる程度になるだろう。

(3)銀行の住宅ローン計算アプリ

銀行は住宅ローンを貸し出しているため、住宅ローン計算アプリを提供している。機能は銀行によってまちまちで、入力項目が細かく分かれているところもあれば簡易的なところもある。

銀行ならではの特徴としては、その銀行の提供する住宅ローン金利を直接入力できる計算アプリもあることだ。審査によって最終的な条件は変わることもあるが、その時点の条件に合わせてシミュレーションできるのは便利な点だろう。

一般的な銀行の住宅ローン計算アプリは諸費用の表示がないことも多いが、ネット銀行では諸費用まで表示されることが多い。住宅ローン金利が低くても諸費用を含めると他社より総返済額が高くなるケースもあるため、諸費用が表示されるのはありがたい機能だ。

住宅ローンの計算アプリを使った比較は銀行で得た条件をもとに実践しよう

住宅ローン計算アプリは返済額や借入額を手軽にシミュレーションできるツールであり、借り入れを検討する時にはぜひ活用してほしい。

ただし詳細まで試算する場合はまずは銀行でシミュレーションしてもらうほうがいいだろう。各銀行や申込者の状況が考慮された条件で試算してもらえるうえ、手数料など細かい点も分かるはずだ。

いくつかの銀行でシミュレーションしてもらったら、その条件をもとに住宅ローンの計算アプリで返済額などを比較してみよう。住宅ローンは必ずしもいちばん返済額の低いものがいいわけではない。団体信用生命保険の内容や銀行ごとの優遇サービスなども考慮して選ぶことをおすすめする。

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文・國村功志(資産形成FP)
 

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