針ではなく、カレンダーのように小窓からのぞくディスクで時表示をするジャンピングアワー機構。時が切り替わる瞬間、ジャンプするように数字が変わることからこう呼ばれるが、時計の機構としては19世紀に生まれた比較的古いものだ。
1920~30年代にアール・デコの様式が時計デザインにも取り入れられるようになると、デコラティブなケースデザインに合う時刻表示として、多くのブランドでジャンピングアワー機構が採用された。特に有名なのはグリュエンで、いまでも市場で比較的見つけやすい。
ジャンルとしてはマイナーな部類に入るが、実は過去にはパテック フィリップやロレックスなど様々な有名ブランドがジャンピングアワーを手がけている。
ジェラルド・ジェンタはジャンピングアワーを好んで取り入れた時計デザイナーであり、自身のブランドのほか、ブルガリなどにも作品を提供している。またフランク ミュラーのクレイジーアワーズはディスクではなく針の時表示だが、文字盤上に離れて配置された時刻に針がジャンプするというユニークなジャンピング機構を取り入れるなど、種類も意外とある。
ジャンピングアワーはその奇抜なデザインとギミックが楽しい。レトログラードと組み合わせたモデルも多く、通常の時計とは異なる際立った個性に魅了される時計ファンは多いのだ。
一方でデメリットもある。まず慣れていないと、パッと見て即座に時刻がわかりにくいという点。表示窓も決して大きくはないため、判読性という点ではアナログ表示よりもやや劣る。
もうひとつデメリットとして昔からいわれるのが故障しやすいという点である。ディスクを1時間ごとに瞬時に動作させる際に歯車に大きな負荷がかかるため、歯が欠けてしまうことがあるのだ。近年のモデルでは、耐久性の高い肉厚な歯車を導入するといった工夫がなされていることが多いが、アンティークの個体を購入するときなどは、ぜひ慎重に状態をチェックするようにしたい。
文◎堀内大輔(編集部)
提供元・Watch LIFE NEWS
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