インドネシア・バリ島のウルワツ寺院に住むマカクは、観光客から故意に持ち物を盗み、それを担保に食料を「ゆする」習性をもつことが判明しました。
こうした等価交換の習性は、ほかに前例がありません。
また年長者で賢いサルほど、より高価な貴重品を狙い、多くの食料を要求することもわかっています。
研究は、1月11日付けで『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載されました。
交渉成立のため品物は大切に保管!
ウダヤナ大学(インドネシア)、レスブリッジ大学(カナダ)の研究チームは、以前から報告されていたウルワツ寺院のマカクによる「ゆすり習性」を確かめるため、現地調査を行いました。
期間は2015〜16年の273日間と、2019年にも再調査をしています。
結果、マカクは人から品物を盗み、それに見合った食料を受け取るまで返さない習性が確認されました。
彼らが狙うのは主に、サングラス、帽子、カバン、履いている靴、タブレット、携帯です。
マカクの等価交換には、3段階のプロセスがありました。
1つ目は、観光客から品物を奪い取り、食料を手渡すまでその場にとどまること。
観光客が物々交換を理解していない場合は、そのシステムを知っている寺院のスタッフのもとに走ります。
2つ目は、等価交換の過程で、品物を返す前に必ず食料を渡してもらうこと。
3つ目は、品物を傷つけると交渉が決裂してしまうため、壊さないよう大切にあつかうことです。
以上から、ウルワツ寺院のマカクは等価交換のシステムをよく理解していることがわかります。
さらに、群れの中でも年長で経験豊富なマカクほど、高価な貴重品(携帯など)をターゲットにし、通常より多くの食料を要求することも特定されました。
人がどの持ち物をどれだけ大切にしているかも注意深い観察と高い認知力で把握していたのです。
一方で、年若く経験の浅いサルは物の価値をあまり理解していませんでした。
しかし、等価交換のシステムは、寺院に住むマカク全体に伝わっていました。
同チームは「こうした集団的・学習的・社会的な習性は、放し飼いの動物において最初の事例になるでしょう」と述べています。
さすが寺院に住むだけあって、頭脳も冴えているようです。
参考文献
cnn
dailymail
提供元・ナゾロジー
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