40歳になると、39歳の時と比べて給与の手取り額が減ってしまう。そう聞くと驚くかもしれないが、何のことはない、介護保険料が徴収されるからだ。40歳になると、正確に言うと誕生日の前日に、介護保険の第2号被保険者となる(65歳以上は第1号被保険者)。
1日生まれの人は気になる毎月の徴収額 どれくらい取られるのか?
一般的には、その月分の社会保険料を翌月に天引きする会社が多いので、介護保険料も徴収月の翌月から天引きされることが多い。なお1日生まれの人は注意が必要だ。例えば10月1日生まれの人は、誕生日の前日が9月30日なので、9月分から徴収される。
介護保険料は、加入している健康保険によって異なる。主に中小企業の人が加入する協会けんぽ、大企業の人が入る健康保険組合、公務員や私学教職員を対象とした共済組合は、給与や賞与に保険料率を乗じて保険料額が算出され、保険料は事業主との折半となっている。個人事業主が加入する国民健康保険の場合は、市町村ごとに保険料を算出している。
第2号保険者の介護保険料の全国平均は、月額5,347円(2016年度10月~3月期)だ。労使折半の場合、個人負担は半額の約2,674円ということだ。
40歳になると、どれくらい手取りが減るのか。月収が50万円で、賞与が2ヵ月分の100万円(年2回)の年収800万円の人の場合、介護保険料は加入者が最も多い協会けんぽで毎月7,850円(自己負担額は3,925円)、賞与分は年間15,700円なので、年間で合計6万2,800円、手取りが減ってしまう。
総報酬割の導入で変わる負担
医療費などの保険者負担の割合は、健康保険組合によって異なる。ただし保険者の所得額にかかわらず一定額なので、所得の低い人の負担が大きかった。そこで格差を是正しようと、加入者の平均年収に応じて保険料割合を計算する総報酬割制の導入が始まった。
これによって、一人当たりの負担額(労使含めた月額)は、健康保険組合が727円の負担増、協会けんぽは241円の負担減と試算されている。年間で見ると、健康保険組合で4,362円の負担増、協会けんぽは1,446円の負担減となる。
同じ年収でも、協会けんぽに加入の中小企業の人は負担減となり、大企業や公務員ら約1,300万人は負担が増えることになる。
介護保険料は2025年に8,200円に?
介護保険制度創設以来、急速な少子高齢化と介護サービス利用者の増加が著しく、制度維持のため保険料の値上げなどを含めた定期的な制度の見直しが今後も予想される。
介護保険料は制度開始以来、右肩上がりで増え続け、当初の2.5倍以上となっている。厚労省の試算によると、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には8,200円に上ると予想されている。
2025年以降も保険料が増えていくことは避けられず、現役世代に大きな負担がかかるだろう。
なぜ40歳から介護保険料が徴収されるのか?
40歳から介護保険料を納める理由は、40歳になると自分自身の老化に起因する疾病によって介護が必要になる可能性もあること、また親が高齢になると親の介護が必要になる可能性が高まるからとされている。
実際に第2号保険者の介護サービス利用者は少ないが、加齢を原因とする一部の疾病で介護が必要になった場合は、介護サービスを受けられる。
親が高齢になって介護が必要となると、介護離職を余儀なくされるリスクがある。毎年10万人が親の介護を理由に離職しているというが、給与が途絶えるため生活費を捻出するのに苦労するだろう。
制度を知り今から準備を
40代は子どもの教育費がかさみ、住宅ローンの負担がかかり、自身の老後資金の準備を考える時期でもある。
介護保険料は、40歳から生きている限り払い続けなくてはならないので、トータルで見ると負担も決して軽くない。
介護は始まりと終わりが見えないので、住宅ローンや教育資金と違い、いくら掛かるかを予測することも難しい。しかし、自分自身も親も介護状態になった時に安心して暮らせるための保険として必要不可欠だ。
介護保険制度を知り、介護を自分事として準備していきたいものだ。
文・森 泰隆(ファイナンシャル・プランナー)
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