この光景はカタールのアルワクラの沿岸都市で2019年12月26日の早朝に、写真愛好家のエリアス・シャシオティスさんによって撮影されたものです。
一見しただけでは何が写っているか解りませんが、実は写っている2つの赤い尖った光は、太陽そのものなのです。
これまでにも奇妙な日の出を映した蜃気楼現象(四角やワイングラス型にみえる)は知られていましたが、角のように2方向に別れるものは、単純な蜃気楼現象だけでは説明できません。
いったい何が、太陽の光をこれほどまで大規模に分割してしまったのでしょうか?
時間を追いながら、変化をみていきましょう。
悪魔の角が融合し始める
日の出からしばらくすると、2本の角の下側が繋がり始め、何かを支えるような円形をとり始めます。
しかしこの段階でも、この赤い光が太陽を映したものだとは想像しづらいかもしれません。
ですがこの奇妙な太陽の形は、カタールでは古くから知られており、地元の人々からは「悪魔の角」「邪悪な日の出」と呼ばれていました。
ではこのまま日が昇ったらどうなるのでしょうか?
エトルリアの花瓶
日がさらに昇り始めると、今度は角ではない他の姿が見えてきました。
古代の人々はこの太陽に「エトルリアの花瓶」と名付けたといいます。
エトルリアはローマ帝国より古くからイタリア北部に文明を築いた都市国家郡です。精緻な文様と独特の丸みを帯びたエトルリアの陶磁器は地中海世界にとっては先進文明の象徴でした。
赤い下弦の太陽が昇り始める
やっと正体が明らかになってきました。
この一連の不思議な太陽の光は、蜃気楼と日食の奇跡の組み合わせによって起きていたのです。
「エトルリアの花瓶」も、よく知られているワイングラスの蜃気楼が、日食により月の丸い影に削られたせいであのように見えていたようです。
悪魔の角と古代文明の花瓶が終わりを迎えるころ、欠けた太陽は水平線から切り離され、空へ昇り始めます。
月ならば、この時間に下弦のまま昇っていくことはありません。
天文に詳しい人ならば、この瞬間はさらにゾクゾクすることでしょう。
下弦の太陽
太陽の上側を削っていた月の影が、下側に移動した様子です。
雲間から牙のように垂れ下がる光が、飛び立った飛行機を食べてしまいそうに見えます。
リング状に…
月の影がほぼ太陽と重なり、光の輪が出現しました。
太陽が十分高くあがったために、もう水平線との間に蜃気楼の関係を作ることはありません。
自然現象のあわせ技は他にもある
知っていたはずの自然現象も、他の要素とあわさると、急に見慣れぬ姿に変わってしまします。
大気光学現象の一つである「光柱」(こうちゅう)は、自然と人間の要素が混じり合わさって産まれる美しい現象です。
空中に生じた氷の結晶によって、民家や街頭、漁船の光が、垂直に店に向かって伸びる現象です。
条件さえ整えば、夏でも高い山などでみることができます。
もしそんな風景に出くわしたら、まさに「奇跡」や「神」、「悪魔」の存在すら感じてしまいそうですね。
reference: facebook
提供元・ナゾロジー
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