世界中のほとんどの国や地域では、プラグ(電源コードの先端)をコンセント(差込口)に差しこむことで電気を利用できます。
しかし、家庭用電源の電圧や周波数、プラグとコンセントの形状は国や地域によってさまざまであり、互換性がありません。
技術革新、エネルギー、環境と人口の変化の研究を行っているカナダ・マニトバ大学(University of Manitoba)の名誉教授バックラブ・スミル氏は、世界中で多くの異なった電圧やコンセントが用いられている現状やその経緯を解説しました。
電圧と周波数の違いは発電機の導入によって生じた
1882年、エジソンが初めて110Vで直流送電を行いました。
またアメリカの家庭に60Hzの交流が導入されたときも、同じ110Vの電圧が用いられており、後に120Vに引き上げられました。
そして北アメリカの家庭では大型家電や電気暖房に対応するため、240Vが扱われるようになったと言われています。
一方、ヨーロッパでは1899年にベルリン・エレキテル(Berliner Elektrizitäts-Werke)社が初めて220Vに移行し、その後230Vが主流となりました。
日本は世界で最も低い電圧100Vを使用しており、しかも周波数が2つあります。
この世界でも不思議な特徴は、地域ごとの導入の違いから生じました。
電化初期の時代に、東京はドイツ製の50Hzの発電機を購入。
ところが、500kmしか離れていない大阪ではアメリカ製の60Hzの発電機を輸入していました。
その結果、西日本と東日本では異なる周波数が用いられるようになったのです。
他の国々を見るとどんな特徴があるでしょうか。
世界は、電圧が120V(110~130V、60Hz)を使用する少数派の国と、230V(220~240V、50Hz)を使用する大多数の国に分かれています。
もちろん日本のような例外もいくつか存在しているようです。
いずれにしても電化初期の発電機の導入が大きな影響を与えてきました。
プラグとコンセントの世界は混沌としている
プラグとコンセントの種類は、初期の導入と選択、システムの多様化により、さらに複雑になりました。
国際電気標準会議によると、現在15種類のプラグとコンセントが認められていますが、そのうち2種類の組み合わせが主流となっているようです。
主流の1つはAとBの組み合わせであり、アメリカやコロンビア、エクアドル、日本などで利用されています。
しかし国ごとにピンの幅が異なる場合があり、互換性があるとは限りません。
もう1つの主流はCとFの組み合わせであり、ヨーロッパと多くのアジア諸国で利用されています。
また主流に乗っていない国々もあり、モルティブでは6つのプラグ(C、D、G、J、K、L)が利用されているのだとか。
さて、これまで紹介してきたように、世界はさまざまな種類の電圧や周波数、プラグとコンセントによって混沌としています。
その原因は導入の経緯や経済的な面が影響していると考えられます。
では、この混沌とした電気の歴史から、わたしたちは教訓を得たでしょうか?
スミル氏は、「iPadのUSBコネクターをサムスンのタブレットに挿してみてください」と皮肉気味に述べています。
世界は標準化よりも大切なことで動いているようです。
参考文献
Why Does the World Harbor So Many Different Voltages, Plugs, and Sockets?
提供元・ナゾロジー
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