私たちに最も近いのは、ネアンデルタール人ではなかったかもしれません。
中国とイギリスの研究グループは25日、中国北東部で見つかった頭蓋骨が、約14万6000年前の絶滅人類のものであると発表しました。
「ドラゴンマン(Dragon man)」と通称されるこの旧人は、現生人類(ホモ・サピエンス)に最も近く、ネアンデルタール人より近縁と見られています。
研究は、6月25日付けで科学誌『The Innovation』に掲載されました。
ネアンデルタールより現生人類に近い可能性
頭蓋骨は1933年に、中国北東部・竜江省のハルビンで、川に橋をかける工事の最中に作業員が見つけたとのこと。
発見当時は満州事変などの混乱により調査ができず、今日まで河北地質大学(Hebei GEO University)に保管されていました。
頭蓋骨きわめて保存状態が良く、大きな臼歯も1本残っています。
頭蓋骨は、ホモ・サピエンスと同様に、比較的短い顔と小さな頬骨の上に大きな脳を収納するスペースがあります。
その一方で、太い眉山や大きな臼歯、ほぼ四角い眼窩などの特徴は、ネアンデルタールやハイデルベルゲンシスに近い特徴です。
こうした点から未記載のヒト属であると考えられ、「ホモ・ロンギ(Homo longi)」と新たに命名されています。
「竜の河」を意味する「ロンギ」は竜江省で見つかったことに由来し、英名では「ドラゴンマン(Dragon man)」となります。
ドラゴンマンの推定される脳サイズは私たちと同程度で、1本残っていた臼歯は、ロシアのアルタイ地方で見つかったデニソワ人と同じくらいでした。
炭素年代測定から、このドラゴンマンは約14万6000年前に生きていたことが分かっています。
また、頭蓋骨とそれに付着していた堆積物の化学分析から、彼らがハルビン地域を起源とすることも判明しました。
ドラゴンマンの生息年代は、約78万〜12万年前の中期更新生と推測されています。
また研究チームは、アフリカ、アジア、ヨーロッパの他の中期更新世のヒト属の化石と比較して、ドラゴンマンの進化の状況を調べました。
その結果、ドラゴンマンは、ホモ・サピエンスと約94万9000年前に共通の祖先を持っていたことが分かったのです。
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の最終共通祖先は100万年以上前に遡ることから、ドラゴンマンの方が遺伝的に現生人類に近いことになります。
一方で、ドラゴンマンの頭蓋骨は、ほかの遺跡で見つかった中期更新世のヒト属にも似ていると指摘されています。
中でもデニソワ人の頭蓋骨と近似しており、今回の化石もデニソワ人である可能性が否定できません。
研究チームは今後、デニソワ人との比較のために、ドラゴンマンの頭蓋骨からDNAを抽出し、タンパク質構造を特定して、遺伝的な差を明らかにしたいと考えています。
参考文献
New human species ‘Dragon man’ may be our closest relative
元論文
Massive cranium from Harbin in northeastern China establishes a new Middle Pleistocene human lineage
提供元・ナゾロジー
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