ナメクジに塩をかけると、からだが縮んで死んでしまうことは有名です。
しかしこの効果、カタツムリにも有効なのはご存知でしょうか。
両者は殻があるかないかだけの違いに見えますが、実際はどんな違いがあるのでしょう。
そして、ナメクジとカタツムリに塩が効くのはなぜなのでしょうか。
実はカタツムリの進化版がナメクジ
梅雨時期になると、庭先や建物の壁によく見られるナメクジやカタツムリ。
小さいのに食欲旺盛で、1日に自重の何倍もの食料を食べることから、農家やガーデニングをする人にとっては悩みのタネでもあります。
一見、カタツムリの方が殻を背負って立派に見えることから、ナメクジの進化した姿と思われがちですが、実はその逆が真です。
カタツムリは、軟体動物門・腹足鋼(ふくそくこう)に属す「陸生の巻き貝」に分類されます。
カタツムリの殻は、ヤドカリのように引っ越し可能ではなく、からだと一体化していて、壊れると死んでしまいます。
殻はからだの保護には便利ですが、動きにくくなったりと不便な面も多々あります。
そこで殻をなくす方向に進化したグループが「ナメクジ」となったのです。
塩をかけて起こる「浸透圧」とは?
カタツムリやナメクジに塩をかけると縮む理由は、からだの中から水分が急速に抜けていくためです。
これを「浸透圧」といいます。
カタツムリやナメクジの細胞には「半透膜」といって、一定サイズの分子などは通すものの、それ以上のものは通さない膜があります。
この半透膜を境にして、内側にからだの水分があり、外側に塩をかけるとします。
すると、外側の濃度が急激に高くなるので、内と外の濃度差が大きくなります(=浸透圧の上昇)。
これに対し、からだは濃度差のバランスを取ろうとして、内側の水分を外側に向けて移動させ始めます。
野菜を塩漬けすると同じことが起こりますが、カタツムリやナメクジの体表は塩を通さないので、体内の水分だけが一方的に出て行ってしまうのです。
塩が少量の場合、水をかけてあげれば元どおり復活しますが、量が多いと脱水症状で死んでしまいます。
しかし、好奇心だけでこの実験をするのはやめましょう。専門家は「その痛みは、私たち人間に置き換えると想像を絶する」と話します。
幸いにもヒトの皮膚は高度に発達し、過剰な水分と熱の喪失を防ぐようになっていますが、カタツムリやナメクジにはこれがありません。
つまり、彼らに塩をかけることは、人間で言うと全身の皮をはいだ状態で塩漬けにされるのと同じです。
その苦しみは、傷口に塩を塗ったことのある人なら少しは想像できるでしょう。
カタツムリやナメクジのような小さな生き物にも、敵に塩を送るつもりで接したいものです。
参考文献
scienceabc
提供元・ナゾロジー
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