ギネスブックによると、ゴールデンレトリバーのフィンリー・モロイ(Finley Molloy)は、一度に6個のテニスボールを咥えられるそう。
確かに、フィンリーは犬の中では最も伸びる口の持ち主ですが、他の生物と比べるとどうでしょう?
別の言い方をすれば、地球上でもっとも口が伸びる生き物は何なのでしょうか?
これについては、まだ科学的なコンセンサスが得られていません。
それでも、いくつかの有力な候補がいることは確かです。
陸上界一の「伸びる口」は?
陸上には、げっ歯類やマンドリルをはじめとするサルなど、口内に食べ物をたくさん頬張るための伸縮可能なポーチを持つ動物がいます。
ハムスターの頬はその最たるもので、全体重の約20%を頬に入れられるという。
しかし、そんなハムスターでもヘビの口には敵いません。
ヘビはよく知られているように、一度の噛みつきで獲物を丸呑みできます。
2018年には、米・フロリダ州にて、自分より大きなオジロジカを丸呑みしたビルマニシキヘビが発見されました。
丸呑みができる秘密は、ヘビの特殊なアゴに隠されています。
人の場合、上アゴと下アゴの骨は隣り合わせていますが、ヘビでは、上アゴと下アゴをつなぐ中間の骨が左右に1本ずつあります。
このおかげで、口を極端に大きく開けてもアゴが外れることはありません。
さらに、ヘビの下アゴは左右にパックリと離すことができ、その間を柔軟な靭帯がつないでいます。
こうしてヘビは上下と左右に口を大きく伸ばせるのです。
ちなみに、獲物を丸呑みしてもお腹が破裂しないのは、肋骨が自由自在に開閉できるためです。
ヘビはおそらく、陸上で最も伸びる口を持つ生物でしょう。
しかし、水中にはヘビの上をいく生物がいます。
水中界一の「伸びる口」は?
伸びる口を持つ水中生物の代表は、地球上で最も大きな動物、クジラです。
現代のクジラは「ヒゲクジラ亜目」と「ハクジラ亜目」に大きく分けられます。
そのうち、伸びる口を持つのはヒゲクジラの方です。
ヒゲクジラは「ひげ板」という上アゴから生えた器官を使って、エサごと海水を飲み込み、ひげ板の間から水だけを吐き出します。
大量の水を一度に飲み込むので、「畝(うね)」と呼ばれる下アゴからヘソまで伸びるヒダが大きく膨らみます。
専門家によると、現存する最大生物のシロナガスクジラは一度に10万リットル以上の水を口に含めるとのこと。
口に含める量としては、間違いなく生物界一でしょう。
もう一つ、水中には伸びる口を持つ奇妙な魚がいます。
「フクロウナギ(Pelican eel)」です。
フクロウナギは1科1属1種しか知られていない深海魚で、大西洋・インド洋・太平洋といった世界中の温暖な海に分布します。
主な生息範囲は、水深550〜3000メートルの中層域です。
フクロウナギは真っ黒いヘビのような体をしており、最大全長100センチ。水中を不活発に漂い、プランクトンをエサにします。
最大の注目ポイントは、風船のように大きく膨らむ口です。
下の画像をご覧ください。
こちらは、フクロウナギが膨らんだ口を萎ませる様子です。
これを見るだけで、いかに口が伸びるかが分かるでしょう。
口を大きくするのは、エサがないときに大きめの魚を食べるためではないかと言われていますが、実際のところは分かっていません。
一部の専門家は「脅威を感じたときの威嚇行為として、口を膨らますのではないか」と考えています。
これまでの観察から、口を通常時の5倍以上まで広げた例もあるとのこと。
伸びた口の大きさではクジラに敵いませんが、伸び率でいうとフクロウナギが一番かもしれません。
参考文献
Which animal has the stretchiest mouth?
提供元・ナゾロジー
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