座り時間の長い生活をしている人は、余暇を使って運動しても増加した死亡率があまり変わらないことが明らかになりました。
京都府立医科大学の研究グループが、6万人を超える日本人を7年間以上追跡したコホート研究データを使って日中の座位時間と死亡率の関係を調査しました。
その結果、生活習慣病などの有無に関わらずに座位時間の長い人は死亡率が高くなり、余暇の運動量を増やしてもこの関連性は完全に抑制できないことが明らかになりました。
デスクワークに救いはないのでしょうか?
研究の詳細は、6月14日付でアメリカ心臓協会(AHA)が発刊する科学雑誌『Journal of the American Heart Association』に掲載されています。
大規模な日本人のコホート研究
座りがちな生活が、血行不良や代謝の低下を引き起こし死亡率を増加させるという話は、最近よく耳にします。
そのため、なるべき空き時間に運動しましょうなんて対策も聞きますが、これらの報告はどの程度信頼できるのでしょうか?
今回報告された研究では、J-MICCSTUDY(日本多施設共同コーホート研究)という、日本人6万4456 名(男性 2万9022名、女性 3万5434 名)を対象に、平均7.7年間も追跡した大規模な調査データが用いられています。
コーホート(またはコホート)研究とは、共通する因子を持った集団を観察する医学研究のことです。
大規模に行うほど、人々の間で広く共通して見られる傾向を明らかにすることができます。
京都府立医科大学大学院医学研究科 地域保健医療疫学 小山講師らの研究グループは、この大規模なデータを用いて分析を行いました。
調査のポイントとなったのは、日中の座位時間と全死亡(すべての死因)の関係、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無、余暇時間の運動量の関係でした。
その結果、次のことが明らかとなったのです。
まず、日本人の大規模研究として初めて、仕事時間と余暇時間を含むすべての日中座位時間について、長いほど死亡率と関係することが明らかになりました。
また生活習慣病の有無に関わらず、日中の座位時間が長いほど死亡率が高くなり、生活習慣病の保有数が多いほど、死亡率も高くなったのです。
そして一番驚きなのが、余暇の身体活動量を増やしても日中の座位時間の長さと死亡率の関連を、完全に抑制できないと明らかになったことです。
デスクワークは命を危険にさらす仕事だった
上のグラフではQ1がもっとも運動量の少ないグループ、Q4がもっとも運動量の多かったグループ別の座位時間と死亡率を示したものです。
図の左から右に行くほど、余暇に運動していた人たちということになります。
しかし、糖尿病を除くと、ほとんど死亡率に変化が見られません。
つまり、余暇時間にいくら運動しても、座位時間が増えることで増加した死亡率の増加は解消されなかったのです。
デスクワークは多くの人が従事する職業です。現在はテレワークの普及に伴い、さらに座りっぱなしで過ごす人が増えている可能性もあります。
しかし、連続して座りっぱなしの状態を続けることは、非常にリスクを伴う行為であるということを理解しておかねばなりません。
研究の結果によると、余暇時間の身体活動量を増やしても、座位時間が及ぼす健康被害の減少効果はごくわずかであることがわかります。
これは座っている時間を短縮する努力が必要ということを示しているのです。
かつてある会社が、社員を立ちっぱなしで作業させていて批判されたりしていましたが、実はかなり人道的な行為だったのかもしれません。
特に日本は世界各国と比較しても、日中の座位時間が長いことが示されています。
研究者は、連続した座位時間を中断することの重要性を訴えており、こまめに動くことで、連続した座位時間を減らすことを心がけるべきだと話しています。
とはいっても、デスクワークに従事している人は、この事実がわかったからといって、日中の座り時間を自由にコントロールすることは難しいでしょう。
「もはや座して死を待つのみ」
デスクワークとは、死を覚悟した侍の境地にある過酷な職業だったのかもしれません。
参考文献
座っている時間が長いほど死亡率が増加する ~その効果は、余暇時間の運動活動量を増やしても、完全に抑制されない~(京都府立医科大学)
元論文
Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study
提供元・ナゾロジー
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