Point
■社会的地位の高い人を信頼してしまう「ハイクラス効果」は、「地位=能力」と錯誤することに起因する
■調査では、ハイクラスの人ほど自分の能力を過大評価する傾向にあることが判明
■学生を対象にした擬似面接では、能力よりも自信過剰な傾向にある人の方が採用されやすかった
社会的地位の高い人ほど、人から信頼されやすい傾向にある。
「A君は家柄が良いから」とか「社長の言うことは間違いない」などといったものがそれに当たる。こうした「ハイクラス効果」の特徴は、地位が高ければ実際の能力いかんに関わらず信頼してしまうというものだ。
ヴァージニア大学の研究によると、「ハイクラス効果」は社会的クラスの高い人を「地位=能力」として認識してしまうことに起因するようだ。どうやら「地位の高い人ならそれ相応の能力を持っているだろう」と思い込んでしまうらしい。
研究の詳細は、5月20日付けで「Journal of Personality and Social Psychology」上に掲載されている。
The Social Advantage of Miscalibrated Individuals: The Relationship Between Social Class and Overconfidence and Its Implications for Class-Based Inequality apa.org /pubs /journals/releases/psp-pspi0000187.pdf
ハイクラスの人は「自信過剰」の傾向にある
研究チームの調査によると、ハイクラスの人には自信過剰なタイプが多いことが判明している。
チームは被験者として、メキシコにある子会社の経営者およそ15万人に参加してもらった。そこでまず参加者の収入や教養の程度に関するデータを収集。それから参加者には、自分自身の社会的地位に関する自己評価をしてもらった。
次に参加者の実際の能力を調査するために「記憶力テスト」と、その後「他の参加者に対する自分の出来」を予測してもらっている。その結果、社会的地位の高い人は他の参加者よりも一般的にテストの出来は良かったものの、彼らが思っているほど高いスコアには達していなかった。
さらにヴァージニア大学の学生230人に参加してもらい、同様のテストと質問を行なった。学生に対する「地位の自己評価」は、親の収入や家庭の教育環境、他の学生に対して自分をどう評価するか、などが指標にされている。
するとハイクラスに属する学生たちは他の学生よりテストスコアが低いにも関わらず、自分の方が優れていると評価付けした学生が多かった。要するに、ハイクラスの人は自分の能力を過大評価する傾向が強いようだ。
人は「自信家」について行きたくなる
研究チームはハイクラスの人がどれほど信頼されやすいかについても調査している。
先ほどと同じ学生に参加してもらい、擬似的な就職面接を受けてもらった。この様子はビデオで録画され、その様子を学生たちを知らない人に見てもらい、評価付けしてもらった。
すると、ハイクラスかつテストで自分の能力を過大評価した学生を採用者に選んだのだ。これは評価の基準において、自信の高さが能力の高さを上回っていた証拠である。
よく考えてみれば、これは当たり前のことかもしれない。
実力は長い時間をかけないと分かりづらい部分でもあるし、能力があってもナヨナヨしている人に付いて行こうとは思わない。一方で地位や肩書きの高さは初対面でも分かりやすい能力の指標であり、そこに「自信」が加われば信頼度はなおさらアップする。
こうした理由が、ハイクラスの人を盲目的に信頼してしまうことにつながるというわけだ。
ところがツライのは意外とハイクラスの人かもしれない。家柄や肩書きが良いという理由で過剰な期待をかけられ、本当の自分を理解されないなんてこともある。
こと信頼の問題において、「100%悪い人々」などいないのかもしれない。
提供元・ナゾロジー
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