Point
■ビジネスパートナーとの交渉は、同じ皿で食事をすると合意率がアップする
■同じ皿での食事に伴う「譲り合い」や「取り分け」が交渉相手との社会的な絆を深めることに繋がっている
■実験では、初対面のペアだけでなく元から親密な友人同士のペアでも、同皿の食事が効果的であることが判明
「同じ釜の飯を食う」と交渉は成功する!?
シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの研究チームは、「ビジネスパートナーと同じプレートで食事をすると交渉の合意率がアップする」という説を発表した。
研究の詳細は、5月4日付けで「Psychological Science」上に掲載されている。
Shared Plates, Shared Minds: Consuming From a Shared Plate Promotes Cooperation
実験では「同じ皿」での食事で合意率がアップ
研究主任のエイレット・フィッシュバッハ氏によれば、同じ皿から食べることで、「譲り合い」や「勧め合い」が生じ、パートナーとの社会的な絆を深めることができるという。
別皿は個人のスピードで食べ進めることで競争的な雰囲気を生むが、同皿はペースを合わせることで協力的な関係を生むようだ。
研究チームはこれを証明するため、被験者を集めて実験を敢行した。
まず初対面同士の2人にペアを組んでもらい、食事をしながらの交渉というシチュエーションをつくった。ペアの半分にはチップス菓子の入ったボウルを1皿、残りの半分のペアには個人別に2つの皿を出している。
次に交渉設定として、ペアの内1人が「経営者」、もう1人が「労働組合の代表」として割り当てられる。目標は組合側の賃金引き上げについて承諾可能な範囲で合意に達することだ。
交渉は22回に分けて行われ、3回目からは無駄なコストのかかるストライキが始まるという条件を課した。ストライキのコストは両者に負担するもので、交渉の合意を早める刺激剤として活用されている。
すると同じ皿を共にしたペアは平均9回の交渉で合意に至り、別皿のペアよりも4回ほど少ないという結果が出た。フィッシュバッハ氏によると、この差は現実世界の換算でおよそ150万ドルの損失の違いがあるとのことだ。
これは食べ物の取り分けや譲り合いに伴って、パートナーとの会話数が自然に増加することも大きな要因となっている。
同じ実験を親しい友人同士のペアでやってみると、初対面同士のペアよりも合意が早かったが、いずれにせよ同じ皿での食事が交渉を円滑にさせることが明らかとなっている。
今後、テクノロジーの発達によりビジネス交渉がリモートで可能になると、食事の席を共にすることも少なくなるだろう。しかし、交渉相手がスター・ウォーズばりにホログラムだけで登場しても信頼関係は築きにくい。
やはり人間、顔と顔を合わせて食事を共にする方が良さそうだ。
提供元・ナゾロジー
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