Point
■食べ歩きをすることで味覚の質や食の楽しみが減退すると判明
■立った状態では温度感覚が鈍感になり、食欲も減退することが分かった
■平衡感覚と味覚は大きく関係しており、身体の安定性が崩れると味への注意が鈍る
タピオカドリンクの美味しさは錯覚かもしれない。
米サウスフロリダ大学の研究によると、食べ歩きは、座っての食事に比べて味の質や食の楽しみが減退するようだ。
研究の詳細は、5月11日付けで「Journal of Consumer Research」上に掲載されている。
Extending the Boundaries of Sensory Marketing and Examining the Sixth Sensory System: Effects of Vestibular Sensations for Sitting versus Standing Postures on Food Taste Perception
立った状態では食のパフォーマンスが落ちる
実験では358人の被験者を募り、「身体状態と味覚」に関するテストに参加してもらった。被験者には実験の意図が伝わらないよう、簡単な味覚テストを行うとだけ伝えてある。
被験者は座った状態か立った状態のいずれかに割り振られており、各々の状態で試食テストを行った。その後、身体・心理状態のストレスおよび食が楽しめたかどうかについて評価付けをしてもらっている。
結果はやはりと言うべきか、座った状態での方がストレスレベルが低く、食の楽しみに関するスコアも高かったようである。
続いて研究チームは、味覚と心理的な居心地の悪さとの間にある相互作用を確かめるため別の実験を行なった。
まず立った状態の被験者の一部に「身体リラックス効果がある」と伝えてあるプラシーボドリンクを飲んでもらう。その後、被験者全員にクッキーを配り、同じように味の評価付けを行なってもらった。
するとドリンクを飲んだ被験者はその他の立った状態の被験者よりも味覚のスコアが高くなると判明している。しかしそれでも座った状態の被験者ほどのスコアには達していなかった。
つまり心理的な不快感とは関係なく、身体状態が味覚に大きく関係していることは明らかなのである。
身体のバランス感が味覚に影響する
この結果からチームは、「座る」「立つ」といった状態の違いで味覚に大きな変化が現れると結論づけた。これは立っている状態の居心地の悪さに注意が向くことで、味覚への印象が落ちてしまうことに起因しているようだ。
また実験の最後として、被験者に座ったあるいは立った状態でホットコーヒーの評価付けを行なってもらった。これは2つの身体状態が温度知覚に与える影響を調べたものである。
すると立った状態では座ったグループよりも温度に鈍感になっており、しかもそれだけでなくコーヒーの消費量も減っていたのだ。
これについて研究チームは「味覚や温度知覚には平衡感覚が関係しており、身体の安定性が不均衡であると味覚が鈍くなったり食欲が減ったりする」と説明している。
つまり食べ歩きは食べ物の一番美味しい状態を引き出すには向いてないわけだ。
ただこれを逆手に取れば、食べ歩きがプラスに働くこともある。例えばダイエットや食事制限をしたいとき、立った状態での食事を増やせば効果的に量を減らすこともできそうだ。
また味覚が落ちるとは言え、食べ歩きが楽しいことに変わりはないのだ。
提供元・ナゾロジー
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