脳腫瘍の早期発見は難しいと言われています。
CT検査やMRI検査の段階になると、すでに腫瘍が大きくなりすぎていて完全に取り除けないケースが多いのです。
そこで名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学の夏目 敦至(なつめ あつし)准教ら研究チームは、尿検査によって脳腫瘍を早期発見する方法を開発しました。
報告によると、新しい方法は99%の正確度で脳腫瘍を発見できるとのこと。
研究の詳細は、4月1日付の学術誌『ACS Applied Materials & Interfaces』に掲載されました。
1mlの尿から大量のマイクロRNAを抽出するデバイスが開発される
今回研究チームは、「マイクロRNA」が脳腫瘍診断のバイオマーカーになると考えました。
このマイクロRNAとは小さな核酸分子であり、血液や尿中に含まれています。
つまり尿検査から脳腫瘍を発見できる可能性があるのです。
ところが従来の分析方法では、十分な種類のマイクロRNAを集めることはできませんでした。
そこでチームは、尿中マイクロRNAを大量に取り出せる装置を開発。
新しい装置は約1億本の酸化亜鉛ナノワイヤーで構成さており、たった1mlの尿から診断可能なほど多くのマイクロRNAを抽出できます。
新しい検査は99%の精度で脳腫瘍を発見できる
次にチームは、68名の脳腫瘍患者と66名の健康な人のマイクロRNAを分析しました。
その結果、脳腫瘍患者のマイクロRNA群には、健康な人にほとんど見られない「脳腫瘍が分泌するマイクロRNA」が存在すると判明。
さらに脳腫瘍患者のマイクロRNAの組み合わせには特徴的な発現パターンがありました。
つまり、新しい方法を利用すれば、尿から脳腫瘍を発見できると分かったのです。
最後にチームは、合計64人の新たな参加者を対象にして、新しい判定方法の正確性を調べました。
その結果、99%の正確度(検査の全体的な性能を表す指標)で脳腫瘍を診断できました。
ちなみに、感度(正しく陽性と判断した割合)は100%、特異度(正しく陰性と判断した割合)は97%となっています。
今回の結果は、尿検査で脳腫瘍の早期発見が可能であることを実証しており、実用化につながるでしょう。
また研究チームは、同様の方法で肺がんや他のがんを診断できる可能性が高いと考えています。
将来的には、尿検査であらゆるがんを早期発見できるかもしれません。
参考文献
Researchers develop urine test capable of early detection of brain tumors with 97% accuracy
元論文
Urinary MicroRNA-Based Diagnostic Model for Central Nervous System Tumors Using Nanowire Scaffolds
提供元・ナゾロジー
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