Point
■営業スマイルが求められる仕事に就いている人は、終業後の飲酒量が多い傾向があることが判明
■表面的行動と飲酒の結びつきの強さは、個人の衝動性や、仕事に求められる自己制御の程度によって左右される
■特に、衝動性の高い人や、仕事の進め方を自分で決められない人、お客との関わり方が単発的な接客業の人では、相関が顕著
お客の理不尽な言動に内心イラッとしても、口角の上がった完璧な笑顔。人相手の仕事をする上で、営業スマイルは必須のスキルです。
そんな中、営業スマイルの在り方を私たちに問い直す説が発表されました。それによると、営業スマイルが求められる仕事に就いている人は、仕事が終わった後で飲むお酒の量が多い傾向があるのだそう。「どおりで…」と、心当たりのある人は少なくなさそうです。
この説を発表したのは、ペンシルベニア州立大学とニューヨーク州立大学バッファロー校の研究チーム。飲食店従業員、看護師、教師といった、日常的に人とよく関わる職業に就いている人々の飲酒習慣を調べました。
ペンシルベニア州立大学のアリシア・グランディー氏によると、こうした人々は、日常的にポジティブな感情を偽造したり、大げさに表したりすることで、ネガティブな感情を抑制しているとのこと。そしてそうした行動が、仕事内容そのものに感じるストレス以上に、飲酒につながっているそうです。論文は、「Journal of Occupational Health Psychology」に掲載されています。
When are fakers also drinkers? A self-control view of emotional labor and alcohol consumption among U.S. service workers.
個人の衝動性と仕事に求められる自己制御の程度が大きく影響
研究チームが活用したのは、米国の労働人口を代表する労働者3,000名近くを対象に、アメリカ国立衛生研究所が実施した大規模調査”National Survey of Work Stress and Health”のデータを活用。米国在住の労働者1,592名に対して行った電話インタビューの内容を分析しました。
データには、被験者が「どれくらいの頻度で感情を偽ったり抑え込んだりして『表面的行動』をとるか?』や、「仕事が終わってからどれくらいの頻度で、どれくらいの量の飲酒をするか?」といったことについての情報が含まれていました。また、被験者が「どれくらい衝動的か?」や、「仕事をどれくらい自分の裁量で進められると感じているか?」も計測しました。
その結果、人とよく接する仕事に就いている人は、そうでない人と比べて、終業後に摂取するアルコール量が全体的に高いことが判明。また、表面的行動が終業後の飲酒に結びついており、個人の衝動性や、仕事に求められる自己制御の程度によって、その結びつきの強さが左右されることも分かりました。
特に、衝動性の高い人や、仕事の進め方を自分の裁量で決められない人では、表面的行動と飲酒の結びつきが顕著でした。もともと衝動的行動に走りやすい人や、終始誰かの指示に従って仕事を進めなければならない人にとって、感情を一日中抑え続けることはかなりハード。だからこそ、「仕事の後くらいは好きにさせてくれ!」という気持ちになるのでしょう。