「生きた化石」シーラカンスの真の寿命が明らかになったようです。
これまでの研究によると、シーラカンスの寿命はだいたい20年前後とされていました。
しかし今回、フランス国立科学研究センター(CNRS)、フランス国立海洋開発研究所(IFREMER)の調査により、従来の5倍に当たる100年と推定されたのです。
研究は、6月17日付けで科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。
シーラカンスは成熟に何年かかる?
シーラカンスは、今から約4億年前のデボン紀に出現した魚類です。
19世紀に発見され始めた化石から、シーラカンスは約6600万年前の隕石衝突で、恐竜たちと共に絶滅したと考えられました。
ところが、1938年になって南アフリカの沖合で、生きたシーラカンスが捕獲されたのです。
驚くべきは、シーラカンスが4億年前からその姿を変えていないことでした。
これがきっかけで「生きた化石」と呼ばれるようになります。
その後もインドネシアやマダガスカル近海で生きた個体が見つかり、種として生存していることが確認されました。
その一方で、シーラカンスの生態は謎だらけです。
例えば、ある種のシーラカンスは体長2メートル、体重105キロまで成長しますが、この成熟にどれくらいの年月を要するのか分かりません。
以前の研究では、20年前後で成熟するという意見もあります。
しかし、この成長速度はマグロに匹敵するほどの早さです。
シーラカンスは代謝が低く、繁殖力も低いため、20年で成熟するのは生物学的に不可能と見られます。
そこで研究チームは、過去に捕獲された27匹のシーラカンスの標本を対象に、成長速度と年齢を調べることにしました。
成熟に55年、寿命は100年に達すると判明!
27匹のシーラカンスは、1953〜1991年にかけて、モザンビークとマダガスカルの間に位置するコモロ諸島付近で捕獲されたもの。
内訳は、成熟したオス11匹、メス13匹、幼魚が1匹に、胎仔(たいし、メスの体内で成長中の稚魚)が2匹です。
研究チームは、偏光顕微鏡を用いて、各個体のウロコの年輪を観察しました。
シーラカンスのウロコは、樹木の年輪と同様に、環状の石灰化した縞模様が年々重なっていくので、年齢を調べるのに有用です。
研究主任のケリーグ・マエ(Kélig Mahé)氏は「これまでは普通の顕微鏡を使っていましたが、偏光顕微鏡により、ウロコの年輪がほとんど気づかないほど薄いことが分かりました」と話します。
結果、27匹のシーラカンスのうち、6匹が60歳代、1匹が84歳であることが判明しました。
「これまでシーラカンスは急速に成長すると予想されていましたが、実際は非常にゆっくりペースだった」とマエ氏は言います。
また、成熟までの期間は個体・性差を考慮しても40〜70年、平均で55年と特定され、寿命は100年に達すると推定されました。
さらに、2匹の胎仔のウロコを調べたところ、年齢は5歳に達していました。
これまでシーラカンスの妊娠期間は約1〜2年と見られていましたが、この結果により、胎仔は母親の胎内で5年ほど過ごすことが示されています。
これは3年の妊娠期間を持つ深海魚のラブカより長く、脊椎動物の中でも最長です。
マエ氏は「本研究から、シーラカンスは最も成長が遅く、最も妊娠期間が長い生物の一つであることが明らかになりました」と述べています。
このゆったりペースこそ、個体としても種としても長生きな理由なのかもしれません。
参考文献
This ‘ancient’ monster fish may live for 100 years
Coelacanths – Enormous Fish That Live Deep in the Ocean – May Live Nearly a Century
元論文
New scale analyses reveal centenarian African coelacanths
提供元・ナゾロジー
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