全国各地で新型コロナウイルス感染症を予防するためのワクチン接種が開始されています。筆者が住む名古屋市では6月の土日に市内の小学校の体育館などにて、集団接種が行われています。看護師ライター(正看護師)として普段活動している筆者も、助っ人に行ってきましたのでそのある日の様子をレポートします。
流れはいたってスムーズ
会場には65歳以上の方が予約しており、時間ごとの予約枠はほぼ埋まっていた状態。天候が不安定な日でしたが、ドタキャンや連絡なしキャンセルもなく、非常にスムーズに行われました。
そのスムーズな流れを担っていたのが、受付担当、予診票確認担当、薬液充填・確認担当、接種後の体調観察担当、次回予約担当。それぞれの持ち場で大きな混乱やミスもなく、事前に指導されていた手順通りに行っていました。
ワクチン接種は、医師会から派遣された開業医を中心とする5名の医師と随行していた看護師のほかに、薬液充填や予診票確認に6名の看護師、そして薬液管理に薬剤師が1名といったチームで構成されています。受付や予約の担当には事務スタッフが、会場それぞれの持ち場の統括は市職員が行っています。
さて、集まった6人の看護師と薬剤師は予約時間の45分前に集合し、手分けしてワクチンの準備をしていきます。使用するワクチンはすべてファイザー製薬の「コミナティ」。他のワクチンとの互換性はないので、1回目をコミナティで接種した人は2回目も自動的にコミナティとなります。
市から手配され、会場に置いてあるのは人数分+予備の注射器と接種用の細い針、ワクチンを希釈するための生理的食塩水(20ml)、希釈用の注射器(針付き)、消毒用エタノールのボトル数本、アルコール綿入りの容器数個、使い捨て手袋などの衛生用品、そして人数分となる量のワクチン。ワクチンは小さなバイアルで、冷凍した状態のまま庫内温度が分かるクーラーボックスに入って届けられます。
会場が閑散とする頃には2L持ってきた水分が空に
日曜日の1日で、約600名が予約していたので99個のワクチンが入っていました。悠長にしている余裕もなく、さっそく手を動かし始めます。
まずはワクチンを20バイアル出して解凍している間、総出で下準備に取り掛かります。会場に届けられていた接種用の注射器は、1つのワクチンのバイアルから6回分小分けできるように特殊なつくりになっているもの。従来型の注射器では5人分までしか分けられませんでした。これに別包装の針を取り付けていく係、解凍したワクチンを希釈するための注射器と接種用注射器、希釈用の食塩水をひとまとめにトレイにセットする係と分担作業。
約100人分をセットできたあたりで、ワクチンを希釈して接種用の注射器に分ける作業に入ります。ワクチンを希釈する食塩水の量は1.8ml。1人0.3mlを注射します。希釈用の注射器に正確に1.8mlを取り、他の看護師や薬剤師と一緒にダブルチェックをした後、ワクチンのバイアルに注入して希釈していきます。
ワクチンは非常にデリケートなつくりになっているため、強く振ったり直射日光に当てたりするのは厳禁。希釈されたワクチンが均等になるように混ぜるのも神経を使います。希釈されたワクチンを接種用の注射器に分ける作業も、非常に細かい作業。きっちりと0.3mlを6本作り、これも誤差がないかダブルチェックしてから払い出し用の定位置に置いていきます。
午前中に50バイアル、午後に49バイアルを適宜クーラーボックスから取り出して解凍し、ひたすら詰めていきます。会場内はエアコンがないため、非常に蒸し暑い状態。筆者は汗かきなのでゴム手袋の中はビショビショに。2L持ってきた水分も会場が閑散としていく頃にはほぼ空になっていました。
接種開始時間までに相当量を詰めておいたおかげで、接種ブースに詰めている医師から「ワクチンまだ~?」と催促されることもなくスムーズに進んでいき、緊張感が漂っていながらも和やかな雰囲気で注射器にワクチンを詰める作業を行えていました。