アイスクリームやスイーツに使用されるバニラは、多くの消費者が好む香りです。
イギリス・エディンバラ大学(University of Edinburgh)生物科学部に所属するジョアンナ・サドレラ氏ら研究チームは、一般的な大腸菌によってポリエチレンテレフタラート(略称:PET)をバニラ香料「バニリン」に変換することに成功しました。
使用済みペットボトルのリサイクル先として新たな展開が期待できます。
研究の詳細は、6月10日付の科学誌『Green Chemistry』に掲載されました。
ペットボトルの新たなリサイクル先はバニラ香料かもしれない
バニリンとはバニラの香りの主成分であり、天然物であればバニラビーンズの中に多く含まれます。
そしてバニリンは人工的な合成も可能であり、天然物に比べてはるかに安価です。
そのため現在、私たちの周りにあるバニラ香料のほとんどは、合成バニリンが使用されています。
さて、今回の研究ではペットボトルのリサイクル先として、バニリンが挙げられています。
全く無関係のように思えますが、研究チームはプラスチックをバニリンに変換する方法を発見したのです。
大腸菌によってペットボトルをバニリンに変換
研究チームは、ペットボトルをリサイクルするために、人間の体内で見られる大腸菌に注目しました。
そして研究室で設計された大腸菌は、ペットボトルに含まれる分子テレフタル酸をバニリンに変換できるのです。
実際、チームは分解された使用済みペットボトルやプラスチック廃棄物に大腸菌を加え、バニリンが生成されることを証明しました。
ちなみにチームによると、「生成されたバニリンは人間が食べても問題ない」とのこと。
しかし、今後の研究で安全性を実証しなければいけないでしょう。
今回の研究の成果は、一度に2つの必要を満たす画期的な発見だと言えます。
世界では毎分約100万本のペットボトルが販売されていますが、リサイクルされるのはわずか14%であり、さらに多くのリサイクル先が必要とされています。
また、私たちはバニリンが大好きです。
バニリンは食品以外にも洗浄剤や化粧品の業界で幅広く利用されており、2018年の世界需要は3万7千トンでした。
将来、私たちの多くが、ペットボトル由来のバニラ香料を楽しんでいるかもしれませんね。
参考文献
Plastic-eating bacteria turns waste into vanilla flavoring
元論文
Microbial synthesis of vanillin from waste poly(ethylene terephthalate)
提供元・ナゾロジー
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