マツダは2021年6月17日、技術開発の長期ビジョンに基づき2030年に向けた新たな技術と商品の開発方針を発表した。その背景には2020年新たに公表した中期経営計画の見直し、2050年カーボンニュートラル化の実現という課題があり、その課題に応えるのが今回発表された電動化戦略である。

電動化戦略の概要

周知のように、マツダは今後の車種構成を2022年に投入する予定の直列6気筒エンジンを縦置きに搭載するFR駆動のラージ商品群と、Cセグメント以下の4気筒エンジンを横置き搭載するスモール商品群を展開することにしている。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=新中期経営計画、『AUTO PROVE』より 引用)

そして、ラージ商品群もスモール商品群も「SKYACTIVマルチソリューション・スケーラブルアーキテクチャー」を採用することを明らかにした。もっともすでにスモール商品群であるMX-30ではCセグメント用の既存プラットフォームを採用しながら内燃エンジンモデル、EVモデルを展開しており、この手法を今後も活用するということだ。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

「SKYACTIVマルチソリューション・スケーラブルアーキテクチャー」では、マイルドハイブリッドの採用、トヨタ・ハイブリッドシステムの搭載、EV+発電用ロータリーエンジンを組み合わせたレンジエクステンダーEVなどが想定されている。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

その一方で、2025年には電気自動車専用の「SKYACTIV EV専用スケーラブル・アーキテクチャー」を新たに導入するとしている。

既存のプラットフォームと新開発のEV専用プラットフォームを合わせた「SKYACTIVマルチソリューション・スケーラブルアーキテクチャー」の商品として、ハイブリッドモデル5車種(マイルドハイブリッドを除く)、プラグインハイブリッドモデル5車種、EVモデル3車種を日本、欧州、米国、中国、アセアンを中心に2022年から2025年にかけて順次導入する予定だ。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

このように、スモール商品群用の横置きエンジン/FFのプラットフォーム、ラージ商品群用の縦置きエンジン/FRプラットフォーム、そして2025年に投入されるEV専用プラットフォームを展開し、2030年の時点でマイルドハイブリッド、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、レンジエクステンダーを採用したクルマが75%、EVが25%と想定し、グローバルでの電動化100%を達成するとしている。

カテゴリー別の電動化

スモール商品群では、すでに24Vマイルドハイブリッド、横置きエンジン用プラットフォームでのEV(MX-30)を展開しているが、2022年にはEVに発電用ロータリーエンジンを組み合わせたレンジエクステンダーが投入される予定だ。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=2022年に登場予定のMX-30EVに発電用ロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダー。駆動モーターと発電エンジンをコンパクトに搭載できるのがメリット、『AUTO PROVE』より 引用)

EVとしては比較的小容量のバッテリーでありながら、発電用エンジンを搭載することで航続距離を伸延させることがレンジエクステンダーの特長で、このシステムは横置きエンジン用プラットフォームであればMX-30以外にCX-30、マツダ3などにも展開できるのだ。なお現在、マツダとして初のアメリカでの生産拠点となるアラバマ新工場でも、この横置きエンジン用プラットフォームの生産を行なうとしている。

2022年にグローバルに投入予定の3.0Lの直列6気筒エンジンを縦置きに搭載するラージ商品群のエンジンはSKYACTIV-G(ガソリン)、SKYACTIV-X(ガソリン)、SKYACTIV-D(ディーゼル)という3機種がラインアップされる。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=6気筒ディーゼル+48Vマイルドハイブリッド、『AUTO PROVE』より 引用)

そしてこれらのエンジンには、48Vマイルドハイブリッドが組み合わされることになる。なおPHEVは4気筒2.0LのSKYACTIV-Gとの組み合わせとなる。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=6気筒ガソリン+48Vマイルドハイブリッド、『AUTO PROVE』より 引用)

EVプラットフォームはこれから開発がスタートすることになるが、その新EVプラットフォームは、デンソー、トヨタ、マツダがメインとなって推進した「EVC.A.Spirit」の技術基盤が用いられることになる。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=6気筒ガソリン+48Vマイルドハイブリッド、『AUTO PROVE』より 引用)

しかし、こうした電動化のためには大規模な開発工数が求められるため、マツダはモデルベース開発、バーチャル開発、シミュレーション技術などをフルに投入し、限りあるリソースで取り組むとしている。

マツダ 2030年に100%電動化を目指す新たな電動化戦略を発表
(画像=ラージ商品群用の縦置き6気筒ガソリンターボ(左)、4気筒ガソリンエンジン+PHEV(中)、6気筒ディーゼルターボ(右)。トランスミッションは新開発の8速ユニット、『AUTO PROVE』より 引用)

また生産においても、多様な電動化ソリューションに対応するため、電動化に向けた混流生産システムの再構築が求められる。そのためにも開発資源を投入することになる。

もう一つの課題は2025年に本格投入が開始されるEVでは、争奪戦状態となっているバッテリーをどのように確保するかも大きな課題だ。

安全技術とコネクテッド技術

先進安全技術に関しては、2022年のラージ商品群から「マツダ・コ・パイロット・コンセプト」のもとで開発するが投入される予定だ。

「コ・パイロット1.0」は、ドライバーの状態を常時モニタリングし、突然の体調不良などを検知した場合は、自動的に安全な場所に移動、停車し緊急通報を行なうシステム。

次世代のコネクテッド・サービスや、OTA(Over the Air:無線通信)によるクルマの機能アップデートなどへの新技術に関しては、トヨタ、マツダ、スバル、スズキ、ダイハツの5社アライアンスを活用して車載通信技術システムの共通化を図り、順次採用することにしている。

提供・AUTO PROVE

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