目次
point
- 片頭痛は女性に多く見られ、脳に異常がなく原因がわかっていない病気
- 新たな研究では、過剰に興奮した視覚野が片頭痛と関連している可能性を示している
片頭痛は頭の片側にズキズキと脈打つような痛みを感じる頭痛で、7人に1人という割合で報告されています。
片頭痛は一度始まると長い人で3日間近く発作が続き、日常生活に支障をきたす場合もあります。
そして、この病気の一番の問題が、詳しい原因が現状不明であるということです。
片頭痛を訴える患者さんは、検査を行っても脳には特に異常が見つからず、その原因がはっきりと解明されていません。
ただ、視覚が過敏になったり、前兆として視覚に異常を訴える人が多いため、何らかの視神経と連動した問題の可能性が考えられています。
新しい研究は、片頭痛の患者と健康な人の合計60人のボランティアの協力によって、片頭痛の原因が神経皮質の興奮と関連しているという最初の証拠を発見しました。
この研究論文は、英国バーギンガム大学のChun Yuen Fong氏を筆頭とした研究チームより発表され、神経系の疾患、臨床などに関するオープンアクセスの科学ジャーナル『Neuroimage:Clinical』へ掲載されています。
Differences in early and late pattern-onset visual-evoked potentials between self- reported migraineurs and controls
謎の頭痛の調査
片側で起きるため「片」という字がついていますが、実は4割ほどの人は両側の頭痛も経験しています。
症状を訴える患者のほとんどは女性で、世界で10億人近い人達が片頭痛持ちだと考えられています。
頭痛が始まると3時間〜72時間持続し、吐き気や光や音に過敏になるという症状も見られます。
また、この頭痛の特徴的なところは、頭痛の起きる1時間ほど前に、キラキラした光やジグザグの光(閃輝暗点)が見えるなど、「前兆」と呼ばれる感覚異常を訴える人たちが存在するところです。
今回の研究では片頭痛持ちと診断された29人と、健康な31人の計60人のボランティアで実験を行いました。参加者は全員女性で、片頭痛患者の内、17人が前兆のある片頭痛経験者で、12人は前兆のない片頭痛経験者です。
片頭痛の人は、視覚的な異常を訴えることが多いため、その関連は以前から指摘されていました。特に片頭痛の患者は縞模様に不快感を示すという報告があります。
実験では、特定のパターンの縞模様を被験者に見せ、そのときの脳波を調査しました。
こうした画像を被験者が見たとき、片頭痛患者は大脳皮質の視覚野で視覚誘発電位(VEP)が強い反応を示して、視覚野が過剰興奮に陥っていることが確認されました。
また、後期視覚処理に関する脳波は、減衰の傾向を示しており、嫌悪刺激に対して抑制する処理を反映していると考えられます。
これは片頭痛患者の視覚野が、外界からの情報を処理するときに、特定の異常が存在している可能性を示唆している、と研究者は語っています。
また、片頭痛を持たない被験者の中で、別の視覚障害が報告されている人たちは、片頭痛患者と同じような視覚野の興奮反応を示しました。
この結果から、視覚野の興奮が片頭痛の原因になっている可能性は高いようですが、それは片頭痛の原因の一部でしかないと思われます。
まだまだ謎の多い片頭痛ですが、上の縞模様を見て気分が悪くなった人や、目の回った人は予備軍の可能性があります。
また片頭痛に悩む人は、あまり視覚的に刺激的なものを見たり、眩しいものを見て脳を興奮させないことが予防につながるかもしれません。
提供元・ナゾロジー
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