point
- イギリスにある洞窟内に、悪魔や魔女を追い払うために使われた保護呪文の痕跡が発見される
- 呪文には、「聖母マリア」を表す文字や箱型や迷路型を用いて、悪魔をトラップに仕掛ける図形などが含まれていた
現代の魔除けと言えば、お守りや神棚、お祓いなどが一般的です。
一方で中世のイギリスでは、保護したい建物や場所に直接呪文を書き記すという方法がありました。
今回シェフィールド・ハラム大学(英)に発見されたのは、イギリスにある洞窟内の壁や天井に無数の魔除け痕跡。これらは悪魔や魔女を追い払うための、保護呪文の役割を果たしていたようです。
洞窟に刻まれた数百以上の「呪文痕跡」
洞窟があるのは、イギリスのダービーシャーとノッティンガムシャーの国境にある渓谷「クレスウェル・クラッグス」です。
およそ4万3000〜1万年前に及ぶ最後の氷河期に人類が使用していたもので、年代調査によると、数十万年前に水の浸食によって自然に形成されたものとのこと。
研究チームは、今年2月に、洞窟内を子細に調査することで、それまで気づかれなかったか、あるいは単なる落書きとして無視されていた無数の呪文マークを見つけました。
しかも、呪文が彫られた年代は16〜19世紀と判明しており、中世にもこの洞窟が使われていたことを示しています。彫刻されたエンブレムは、中世イギリスでよく見られたマークに酷似しており、魔除けのために家の出入り口、窓、暖炉の周りに描かれていました。
また、呪文の彫刻期間が3世紀に及ぶのは、おそらく何世代にもわたって人々が書き加えていったからと推測されます。
呪文には「聖母マリア」を意味するものも
研究チームは、「LIDAR(レーザー画像検出と測距)」という技術を用いて、洞窟内全域にわたる3Dバーチャルマップを作成しました。これはレーザーを壁表面に照射して、反射光を収集・測定することで、全体像をデジタル上で再構築します。
これを使えば、下のように洞窟内の好きな場所を観察できます。
発見された保護呪文は「魔除けの印(apotropaic marks)」と呼ばれ、「立ち去れ」という意味のギリシア語「apotrepein」から来ています。
呪文の種類は多岐にわたり、「PM(Pace Maria)」や「V」を二つ重ねて「処女の中の処女(Virgin of Virgins)」、すなわち「聖母マリア(Virgin Mary )」を示すものもありました。
また図形としては箱や迷路、対角線を多用したものがメインで、これは悪魔を罠にかける道具を意味しています。
しかし一方で、なぜこの洞窟の中に保護呪文を施したのかは分かっていません。
この地に住んでいた地元民が、農作物の不作時期や流行した病気に対して行なったのかもしれませんし、洞窟自体を不吉な場所と見なして呪文を残したのかもしれません。
3Dマップ・アニメーションはこちら。
提供元・ナゾロジー
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