中国北西部でモンスター級の哺乳動物の化石が発見されました。

甘粛省(かんしゅくしょう)にある臨夏(リンシア)盆地で見つかった約2650万年前の頭蓋骨。

中国科学アカデミー(Chinese Academy of Sciences)の調査により、この化石は絶滅した巨大サイ「パラケラテリウム(Paraceratherium)」の新種と判明しました。

サイズは、過去に地上を歩いた哺乳類の中で最大クラスと見られます。

研究は、6月17日付けで科学雑誌『Communications Biology』に掲載されました。

目次

  1. 史上最大のサイは「アフリカゾウ5頭分」?

史上最大のサイは「アフリカゾウ5頭分」?

パラケラテリウム属は、ユーラシア大陸を中心に、およそ3600万〜2400万年前まで存在したツノなしの巨大サイです。

今回発見された新種は、その6番目の記載種として、「パラケラテリウム・リンシアンス(Paraceratherium linxiaense)」と命名されました。

パラケラテリウムはやや細身の胴体と4本の脚を持ち、首も長く、形としては今日のサイよりもウマに近いです。

平均的なサイズは、体長7メートル、肩高4メートル、首長2〜2.5メートル、体重11〜20トンとされています。

2650万年前の「モンスター級の巨大サイ」が新たに見つかる、地上最大の哺乳類か
(画像=パラケラテリウム(左から3番目) / Credit: CARLY CASSELLA-New Fossil Reveals One of The Largest Land Mammals Ever Found, And It’s a Rhino(2021)、『ナゾロジー』より引用)

頭蓋骨の比較分析から、新種のサイズは、体長8メートル、肩高4.8メートルと算出。

驚くべきはその体重で、完全な化石が存在しないため正確な値ではありませんが、推定で約24トンとされています。

これはアフリカゾウ3〜5頭分とほぼ同じ重さです。

現存するサイ(体長2メートル)とは比べ物になりませんし、パラケラテリウム属の中でも最大種と見られます。

研究主任のタオ・ドン氏は「木の葉っぱを食べるために後ろ足で立つと高さ7メートルには達したでしょう」と話します。

2650万年前の「モンスター級の巨大サイ」が新たに見つかる、地上最大の哺乳類か
(画像=新種「P .リンシアンス」の頭蓋骨 / Credit: Tao Deng-Ancient giant rhino was one of the largest mammals ever to walk Earth(2021)、『ナゾロジー』より引用)
2650万年前の「モンスター級の巨大サイ」が新たに見つかる、地上最大の哺乳類か
(画像=新種「P .リンシアンス」の頭蓋骨 / Credit: Tao Deng et al., Communications Biology(2021)、『ナゾロジー』より引用)

頭蓋骨の分析から、新種には鼻の幹が比較的短く、首が長くて、鼻腔が深いという特徴がありました。

これはカザフスタンで発見された「パラケラテリウム・レピドゥム(P. lepidum)」に似ており、南方のパキスタンで見つかった「パラケラテリウム・バグチエンス(P.bugtiense)」は、これらより少し小さく、鼻腔も浅いです。

さらに他の種の分布と形態を合わせると、パラケラテリウムはかつて、モンゴル高原から中国北西部、カザフスタン、そしてチベットを経由してパキスタンまで移動したと推測されます。

2650万年前の「モンスター級の巨大サイ」が新たに見つかる、地上最大の哺乳類か
(画像=当時の環境とパラケラテリウム属の分布 / Credit: Tao Deng et al., Communications Biology(2021)、『ナゾロジー』より引用)
2650万年前の「モンスター級の巨大サイ」が新たに見つかる、地上最大の哺乳類か
(画像=P・リンシアンスの復元イメージ / Credit: Tao Deng-Ancient giant rhino was one of the largest mammals ever to walk Earth(2021)、『ナゾロジー』より引用)

パラケラテリウムは、それぞれの場所に適応し、3600万〜2400万年前の間にいくつかの種に分岐したようです。

一方で、彼らがその後どのような運命をたどり、絶滅していったのかは分かりません。

研究チームは今後、パラケラテリウムの絶滅原因を解明するべく、調査を継続する予定です。


参考文献

New Fossil Reveals One of The Largest Land Mammals Ever Found, And It’s a Rhino

元論文

An Oligocene giant rhino provides insights into Paraceratherium evolution


提供元・ナゾロジー

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