自然豊かな日本は、生息する動物の種類もさまざまです。
しかし、同じ日本列島でも北海道と本州では、住んでいる動物が大きく違うのがわかります。
これは一体なぜなのでしょう?
また近縁種でも、本州より北海道の動物の方が大きいのはなぜでしょうか?
日本列島はどうやってできた?
日常生活では気づきませんが、地球上の大陸は長い年月をかけて常に動きつづけています。
日本列島も最初から今の場所にあったのではなく、遠いところから移動してきました。
プレートに乗ったサンゴ礁や陸地のかけら、海山などが北上し、アジア大陸の南北にくっついたのです。
その後、日本海が少しずつ開いていき、日本列島が大陸から離れて、現在のような島国となりました。
これがおよそ1500万年前のことです。北海道と本州もこのときに誕生しました。
このように地球の陸地は、プレートの移動や気候変動により大きくその姿を変えています。
現に今でも日本は動いており、約8000万年後にはハワイとくっついてしまうのです。
それでは、北海道と本州で生き物がちがうのはなぜでしょう?
北海道と本州をわける「ブラキストン線」ってなに?
その原因は、氷河時代の気候変動にあります。
地球の最終氷期は約7万〜1万年前までつづき、最も寒かった時期は2万年前でした。
すると海が凍ってしまって、海面が今より120メートルほど低くなったのです。
その結果、日本列島の様子も大きく変わりました。
北海道の真上に縦長のサハリン(樺太)があり、その左にユーラシア大陸があります。
海面が下がったので、地図上の「間宮海峡(水深10mほど)」と「宗谷海峡(水深45〜50m)」が陸化して、動物たちがユーラシア→サハリン→北海道と移動してきたのです。
ところが、北海道と青森をわける「津軽海峡」は水深が140mほどあって、陸としてつながらず、動物たちはわたることができませんでした。
こうして北海道と本州の生息動物が大きく異なるようになったのです。
ヒグマやナキウサギ、エゾシマリス、シマフクロウなどは北海道にしかおらず、ツキノワグマやニホンザル、ニホンリス、ライチョウ、ムササビなどは青森までしかいません。
これを1880年代に発見したイギリスの軍人で動物学者のトーマス・ブラキストンにちなみ、北海道と本州をわける分布境界を「ブラキストン線」と呼びます。
寒い地域ほど大きくなる「ベルクマンの法則」とは?
ここで疑問をもうひとつ。
クマはクマでも、北海道のヒグマは本州のツキノワグマより大きく、極地のホッキョクグマはヒグマよりさらに大きいのはなぜでしょう?
これは、寒い地域ほど体が大きくなるという「ベルクマンの法則」によります。
寒い場所に暮らす動物たちは、体から奪われる熱量を減らさないといけません。
体内でつくられる熱量は体重に比例し、体外に放出される熱量は体表面積に比例します。
そして、体が大きくなるにつれて、体重あたりの表面積は小さくなります(※体長がa倍になると体重はaの3乗倍になり、表面積はaの2乗倍になるから)。
つまり、寒冷地の動物たちは、体を大きくして熱の生産量を増やしつつ、熱が奪われる窓口(表面積)を小さくすることで体温を保っているのです。
なので、北海道と本州の近縁種を比べてみると、北海道の方が大きいことに気づきます。
私たち人間でも、アフリカや東南アジアの熱帯では小柄で手足の細長い人が多く、ロシアやヨーロッパの寒い地域ほど大柄なイメージがありますよね。
これもみんな「ベルクマンの法則」にのっとっているのです。
参考文献
『自然のしくみがわかる地理学入門』(水野一晴著、ベレ出版、2015)
提供元・ナゾロジー
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