ドライアイスは、直に手に持ってしまうと「やけど」を負ってしまいます。
しかし、冷たいドライアイスで負う怪我をなぜ「やけど」と表現するのでしょうか?
実は冷たいドライアイスに触れたときと、炎に触れたとき、原理は異なりますが私たちは同じような怪我を負っているのです。
今回は、そんなドライアイスで起きる「やけど」がなんなのかを解説していきます。
ドライアイスで「やけど」する理由
ドライアイスは言わずとしれた二酸化炭素を凍らせた氷です。
私たちが呼吸で吐き出すものと同じ二酸化炭素は、-79℃で凍らせることができます。
このため、ドライアイスは-78℃から昇華(固体が気体に変わること)をはじめます。
さて本題のドライアイスによる「やけど」ですが、これは凍傷と呼ばれるもので、熱いものを触った「やけど」と酷似した負傷を引き起こします。
ドライアイスは非常に冷たいため、触れると細胞内の温度が急速に下がり、内部の水分が凍りついてしまいます。
水分が凍りついた場合、液体のときより体積は増加するので、これによって細胞は破裂してしまうのです。
熱傷の場合、細胞は熱で組織が焼けて壊れます。
このため熱による「やけど」と、ドライアイスによる「やけど」の違いは、細胞の壊れる原理が異なるだけで、怪我としては同じ細胞の破壊なのです。
また、私たちの体は周囲の温度が低下すると、体内の熱を逃さないようにするため皮膚に近い血管が収縮して、その領域の血流を減少させ、血行を悪くします。
これによって細胞は活動に必要な血液を得られなくなるため、長時間冷たいものに触れていると、その領域の細胞が死んでしまいます。
ドライアイスに限らず、寒い場所に長時間いることで起きる凍傷も同じ原理です。
凍傷を放置すると、細胞が壊死してしまい、最悪指先などを切断しなければならなくなります。
氷の場合は、徐々に細胞が冷やされるため、凍傷もゆっくり進み、通所は軽度のしもやけで済みます。
しかし、ドライアイスの場合、-78℃という非常に低温なため、少し触れていただけでも重度の凍傷が急激に発生します。
結果として熱で焼いたときのような細胞の破壊が起こり、「やけど」と表現するような怪我を負ってしまうのです。
またこうした、凍りつくことによる細胞の破壊は、お刺身などを冷凍した場合にも起こります。
冷凍した刺身などは、解凍後ぐにゃぐにゃな状態になってしまうことがありますが、これも凍結によって細胞が破壊されることで起こります。
凍結による怪我も、炎で焼かれた場合と同じように、細胞をもとに戻せないレベルで破壊してしまうため、注意が必要なのです。
どうも冷たいものに対しては、高熱のものに比べて警戒心が緩む人もいるようで「ドライアイスを食べてみた」というような動画も稀に見かけますが、炎を扱うのと同じくらい危険な物質であることを忘れないようにしましょう。
参考文献
Why Does ‘Cold’ Dry Ice Burn?(scienceabc)
提供元・ナゾロジー
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