アマゾン熱帯雨林では、今も深刻な火災が続いています。あまりにも広範囲にわたる火災のため、「酸素供給は大丈夫なの?」といった疑問がネット上で話題になりました。
「アマゾンは地球の酸素の20%を生産」は誤り| ナショナルジオグラフィック
では実際に世界中の木が伐採されたら、世界はどうなるのでしょうか?
その疑問に、有名科学Youtubeチャンネル「Life Noggin」が答えています。
2015年に行われたある調査によると、世界には3兆本の木が生えているそうです。
これはつまり、人間1人あたり400本の木が存在するということです。
かなり多いようにも感じますが、この数は人類の文明が始まる前に比べれば半減しています。
木は地球上に存在する生命にとって重要な役割を担っており、仮にすべての木が失われたとしたら、私たちは大変な窮地に立たされることになります。
では、地球上にあるすべての木が一夜にして1本残らず姿を消したとしたらどんなことが起きるのか、一緒に考えてみましょう。
1. 空気が汚れまくる
まず初めに、大気の質が急降下するでしょうでしょう。
木は、光合成を通じて二酸化炭素を吸収し、酸素を排出しています。
米国農務省林野部によると、木は、化石燃料から出る二酸化炭素の年間排出量のうち、15%を相殺しているそうです。
また木は、微粒子状物質、オゾン、二酸化硫黄、二酸化窒素などの大気汚染物質を取り除く機能も持っています。
ですから、木が無ければ、大気中の酸素量は減り、温室効果ガスの増加によって気温はますます上昇し、大気汚染物質が増えることで健康被害や死の危険が生じるのです。
さらに、汚染物質が増加すると、酸性雨によって水質や地質も低下します。酸性雨は雨に限らず、霧や塵といったあらゆる形で大地を襲い尽くします。
酸性雨は森林、湖、河川だけでなく、そこに住む動物たちや、建物、乗り物などにも被害を与えます。もちろん私たち人間にも、ぜんそく、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患を含むさまざまな健康被害がもたらされます。
ですが、これらはすべて、あくまでも「雨が降ること」を前提にした話。そもそも雨が降らなくなるかもしれないのです…。
2. 雨が降らなくなる
木は、水循環においても重要な役割を担っています。
雨水を根から吸収した木は、その水分を葉を通じて大気中へ蒸発させます。これを蒸散と呼びます。
もしこの世から木が消えてしまったら、雨の量は激減し、世界各地で干ばつが発生するでしょう。
たとえば、2012年に行われた研究では、アマゾンやコンゴの熱帯雨林で森林破壊が続いた場合、乾期にこれらの地域の乾期における降雨量が2050年までに最大21%減少することが明らかになりました。
こうした条件が揃えば、農作物の成長は著しく妨げられ、ゆくゆくは食糧不足が生じるでしょう。それに、森林を住処や食糧確保の場として利用している動物たちも最終的に絶滅してしまいます。
陸上動物と植物の80%は森林に生息していると推測されています。木は、多くの生物にとっての命綱なのです。
こうした環境の変化は、数ヶ月から数年を掛けて起きるでしょう。ただし、木が影響力を持つ対象は環境だけに留まりません。
3. 心にも悪影響が…
多くの研究で、森林の中で時間を過ごすことが健康に良いことが明らかにされています。
森林浴は血圧やストレスホルモンの値を下げるだけでなく、気分を改善し、集中力を高める効果もあります。
また、都会に木を植えることは、犯罪率の低下に繋がることも分かっています。
2011年にシカゴで行われた調査では、植物が多く生えた建物の周辺は、植物が少ない建物の周辺と比較して、窃盗犯罪の発生率が48%、暴力犯罪の発生率が56%低いことが明らかになりました。
これは、木がたくさんある場所では、より多くの人が屋外のスペースを利用するため、人の目が行き渡るからだと考えられます。
さらに木には、暴力の引き金になる精神的な疲れを軽減してくれる効果もあります。
こうして見ていくと、木が私たちを地獄絵図のように恐ろしい世界から守ってくれていることがよく分かります。思わず、木の幹に抱きついて感謝を伝えたくなりますね。
提供元・ナゾロジー
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