イギリス南西部・コーンウォール地方にある「ロスト・ガーデンズ・オブ・ヘリガン」という場所をご存知でしょうか。
広大な敷地と豊かな自然に包まれた神秘的な庭園で、イギリス屈指の観光名所として知られます。
中でも有名なのが、柔和な表情で横たわる巨大な女神像です。
この像は、季節によって姿が変化するという不思議な特徴を持ちます。
人工の彫像に自然の生命力が吹き込まれた、まさに「生きた芸術」なのです。
400年の歴史を持つ神秘の庭園
庭園はもともと、1603年にトレメイン家という地主の所有地として始まりました。
200エーカーという広大な面積を持ち(1エーカーは約4000平方メートル)、代々、雇われた庭師によって清潔に保たれてきました。しかし、1914年の第一次世界大戦の開戦に伴い、庭師たちが戦地に赴き、庭は次第に荒廃していったのです。
その後、1991年になるまでその存在は忘れ去られ、完全な荒地と化していました。
それでも、90年代に庭園の修復プロジェクトが始まり、庭園は再び息を吹き返しました。
横たわる女神像が作られたのもこの時です。
地元の芸術家であるピートとスーのヒル兄妹が、プロジェクトの一環として1997年に像の建設を依頼されたのがきっかけでした。
それ依頼、庭園の象徴的な存在となっています。
季節とともに変化する女神
女神像は、庭園での体験を豊かで思い出深いものにする目的で作られました。
彫像は中空になっており、木材と防風網で骨格ができています。
その表面に泥・セメント・砂を混ぜたものを塗って体が与えられました。
そして、頭部や胴体ごとに異なる植物を植えることで、髪の毛や衣服が表現されました。
髪の毛には「モントブレチア」という葉が先細りになる植物が使われており、胴体は衣服と称して、コケやツタで覆われています。
もともと胴体は、地衣類を繁殖させるためにヨーグルトがコーティングされていたそうです。
それでは、女神像がどのように変化するのか、季節を追って見ていきましょう。
まずは春。
緑鮮やかな草木に覆われ、春のめざめを待っているかのようです。顔の表面にはコケが見られます。
そして夏。
温暖な気候で、自然の強い生命力が感じられます。
しかし、これが秋になると…
命の移り変わりや儚さが巧みに表現されていますね。
そして冬。
周囲の草木も枯れ、一面の雪が女神を覆います。
雪化粧のせいか、表情もまた違った美しさを見せていますね。
しかし、春がやってくると、また緑が芽吹き始め、柔らかな微笑みを取り戻します。
その様子はまるで、時間とともに年を重ねる人のようであり、生命の豊かさが感じられます。
生きてる間に一度は見てみたいものですね。
【編集注 2020.06.15 15:42】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
提供元・ナゾロジー
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