目次

  1. 最新のシュミレーターが音作りを効率化した
  2. 環境規制にはハイブリッドで対応
音の専門家がつくるフェラーリのエンジン音がすごい
(画像=Ferrari Portofino / credit: BRÜEL & KJÆR、『ナゾロジー』より引用)

ガソリンで走る車は走行中、絶えずエンジン音を出しています。

普段エンジン音を気に留める人は少ないと思いますが、実は高級自動車メーカーのフェラーリはその音に強いこだわりを持っているんです。

その甲高く澄んだ音は「管楽器が鳴っているようだ」と例えられることも。その音は以下動画でも聞くことができます。

フェラーリは独自のエンジン音にこだわっており、フェラーリの制作部門には音作りの専門家までいるそうです。

しかし現在、都市での騒音規制や世界的な環境規制により自動車から大きなエンジン音が無くなりつつあります。

フェラーリのブランドイメージとも言える美しいエンジン音は失われてしまうのでしょうか?

最新のシュミレーターが音作りを効率化した

都市部での騒音規制の対応として、多くの自動車会社がスピーカーによる人工のエンジン音を採用しています。

そんな中、音響エンジニアのフランチェスコ・カルソーネ氏いわく、フェラーリは人工のエンジン音に頼らず、機械を通さない純粋なエンジン音を採用し続けるそうです。

厳しい規制をクリアするために、フランチェスコ氏は、エンジンの部品や車体内部の部品をひとつずつ交換し、外に聞こえる音と車内に響く音のバランスを取ることにしました。

本来であれば、この作業には莫大なコストがかかるはずでしたが、コンピュータシミュレーションを使うことで効率的に作業を進めることができました。

音の専門家がつくるフェラーリのエンジン音がすごい
(画像=実際に使われたNVHシミュレーター / credit: BRÜEL & KJÆR、『ナゾロジー』より引用)

作業に使われたシュミレーターはBRÜEL & KJÆR(ブリュッエル&ケラー)社のNVHシミュレーター(Noise「騒音」, Vibration「振動」, Harshness「苛立ち」)で、仮想空間を走る自動車のNVHデータを評価することができます。デスクトップパソコンで作動し、車両の状態や各種部品をボタン一つで交換することができます。

このシミュレーターを使い、規制をクリアしつつ、フェラーリの顧客が求める高音で大きく聞こえるエンジン音を追求しました。

また、完成した音は運転体験シミュレーターをつかってテストドライバーに実際に評価してもらい、満足度の高いものを採用しているそうです。

自動車を運転しているとき、聞き流してしまいがちなエンジン音ですが、フェラーリはここまでこだわって制作しているんですね。

音の専門家がつくるフェラーリのエンジン音がすごい
(画像=運転体験シミュレーションに搭載されているヘキサポッド。黒い柱上のパーツが立体的に動くことで運転中の車内を再現する / credit: BRÜEL & KJÆR、『ナゾロジー』より引用)

環境規制にはハイブリッドで対応

音量の問題だけでなく、環境規制にも対応しなければなりません。

そこでフェラーリは、ハイブリット車(以下HV)である「SF90 STRADALE」を開発。HVはガソリンで動くエンジンをモーターでアシストすることで燃費を向上させた自動車です。

「SF90 STRADALE」はフェラーリこだわりのエンジン音を奏でつつ、最高出力780馬力を実現する、非常にパワフルなモデルになりました。

音の専門家がつくるフェラーリのエンジン音がすごい
(画像=SF90 STRADALE/ credit: ferrari、『ナゾロジー』より引用)

フランチェスコ氏いわく、フェラーリは常に新しい技術を最大限に活かすことを目指しているそうです。

現在、世界ではHVよりさらに環境に配慮した電気自動車(以下EV)の開発が進んでいます。EVはエンジンを積まず、モーターのみで動く自動車です。

実は、エンジン音にこだわるフェラーリにとって、エンジンがないEVは天敵と言える存在で、2022年に発売を予定していた初のEVも2025年へ発売延期となっています。

純粋なエンジン音へのこだわりを一貫して、音の要素を含むEVの新しい技術を開発するのか、もしくはこだわりを捨てスピーカーによる人工のエンジン音を採用するのか…。

今後のフェラーリの動向が気になりますね。

提供元・ナゾロジー

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