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- ノルウェー領のスピッツベルゲン島には、世界の終末に備えて種子を冷凍保存するための巨大な貯蔵庫がある
- 現代版「ノアの箱舟」と呼ばれ、現段階で、5000種以上の種子がおよそ100万個保存されている
ノルウェー領スヴァールバル諸島に位置する最大の島・スピッツベルゲン島には、「終末貯蔵室(doomsday vault)」と呼ばれる施設があります。
正式名称を「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」といい、「終末の日に備えて、作物の種子を貯蔵する」目的のもと建設されました。
深刻化する気候変動や環境破壊に際して、絶滅が恐れられる種子を保護する施設として、現代版「ノアの箱舟」とも称されています。
「終末の日」に備えて「種子」を冷凍保存
終末貯蔵室は、地球上の作物の種子を冷凍保存できる世界最大の施設として、2008年に創設されました。以来、世界中の研究施設から種子の提供を受け、現段階ですでに5000種を越える種子、総計およそ100万個が保管されています。
貯蔵室内は、マイナス18~20°Cに温度設定されていますが、もし機械が故障したとしても、永久凍土層に建設されているため、マイナス4°Cで冷凍を維持できるのです。
施設を運営する非営利団体「Crop Trust」の調べでは、現在、地球上にある約1700種以上の作物の種子が、温暖化や洪水、干ばつ、(植物の)疫病の影響で、脆弱になりつつあると報告されています。
このまま気候変動の悪影響に晒されて、繁殖不能になるのを防ぐためにも、種子の保護活動が必要なのです。
歴史的・文化的に価値のあるものも対象
種子の提供には、アメリカやタイ、アイルランド、コスタリカ、エチオピア、レバノンなど、幅広い地域の大学や研究センターが参加しています。
また、アメリカ先住民である「チェロキー族」も9種の種子を提供しています。
これは、保護活動が「気候変動に影響を受けている種子だけではなく、歴史的・文化的に価値のあるものも保護しよう」という目的も含んでいるためです。
チェロキー族には、ヨーロッパ人の侵略を受けても、土着の作物を代々守り続けてきた歴史があります。
さらに、貯蔵室に保管されている種子は、今後新たに出現する疫病や害虫、環境変化に対して、より抵抗力ある作物を作るための研究にも供される予定です。
未来の作物は、高温・低温地域や干ばつ、あるいは海面上昇による塩素の高い土壌など、あらゆる過酷な環境に耐えうる必要があるかもしれません。
提供元・ナゾロジー
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