point
- プログラミングに必要な素質は数学力よりも言語能力という研究結果
- プログラミングの学習は第2外国語の学習と同じ脳の場所を使う
プログラミングに馴染みのない人にとって、プログラム言語は非常に厄介に感じるものです。
特にこれまでの通説では「プログラミングは数学力に通じる」とされており、文系出身者にとっては、より一層の苦手意識を感じさせる要素になっていました。
しかし今回、アメリカの研究者らによって行われた研究によって、プログラム言語の学習効率は主として言語能力に依存していることがわかりました。
数学の専門知識や計算能力の介在する余地は想像より遥かに少なかったのです。
小説や詩の文面にキラリと光るセンスを感じ取る能力がある人は、プログラマー適性があるかもしれません。
しかし研究者たちは、どのようにプログラミング適性と言語能力の相関関係をみつけだしたのでしょうか?
研究内容はシアトルにあるワシントン大学のシャンテルS.プラット氏らによってまとめられ、3月2日に学術雑誌「nature」に掲載されました。
Relating Natural Language Aptitude to Individual Differences in Learning Programming Languages
Chantel S. Prat, Tara M. Madhyastha, Malayka J. Mottar
言語能力とプログラミング学習効率は相関関係にあった
実験に先立って、研究者たちは「プログラミングは第2の言語である」という仮説をたてました。
そしてまず36人のプログラミング初心者を集め、彼らの言語能力、計算能力、推論能力、作業メモリ(短期記憶)などを測定しました。
次に彼らに45分間の「Python」と呼ばれるプログラム言語の講義を10回受けてもらいました。
Pythonは機械学習需要の高まりとともに、現在利用者が増えているプログラム言語です。
プログラミングの講義が終わった後は、各個人に対してどれほどプログラミングが身についているかのテストが行われました。
結果、プログラミング言語の成績と最も強い相関関係があったのは、意外にも言語能力でした。
その影響は圧倒的で、プログラミングの学習速度における個人差の70%以上を決める要因になっていました。
一方、計算能力、推論能力も残りの30%の範囲で、プログラミングの学習効率に関連してはいましたが、俗説とは異なり、言語能力にくらべて少ない相関にありました。
ただプログラムの正確性に関しては、言語能力よりも認識能力(推論、短期記憶)のほうが重要という結果が出ています。
脳波を測りプログラミングの学習効率を事前判別する
今回の研究ではテストを行う以外にも、実験参加者の安静時の脳波も検出されました。
各被験者はプログラミングの講座を受けていない状態で、脳全体の脳波を測定されました。
結果、右前頭側頭のβ波の出力が高い人ほど、その後の講義を経たプログラミングの成績が高いことがわかりました。
以前他の研究で、プログラミング言語の代わりにフランス語を用いて同じような脳波測定が行われましたが、こちらもやはり右前頭側頭のβ波の出力が高い人ほど、学習後のフランス語の成績が高いことがわかっています。
このことから、右前頭側頭は新言語を学習するにあたっての、個人差や才能をうみだす部位であると考えられます。
古典的には、言語を担当する脳は左脳とされてきましたが、今回の研究でも固定概念が覆されたことになります。
しかしプログラミングの技能が一定のラインを超えると、最も必要な素質は問題解決力や柔軟な発想になるとも言われています。プログラミング言語の学習能力は、プログラミング能力そのものとは微妙に異なるのです。
ともあれ、今後は数学の成績が悪くても、プログラマーを諦める必要はなくなりそうですね。
提供元・ナゾロジー
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