越境ECプラットフォームのイーベイ・ジャパンが、「トレーディングカード販売拡大ウェビナー」をオンラインで開催した。直近、ポケモンカード投資家の登場で国内での価格が高騰しているポケモンカード。同社によれば、北米を中心とした海外におけるポケモンカードの需要が急拡大しているという。
ウェビナーでは、ポケモンカードをメインに遊戯王やマジック:ザ・ギャザリングといったトレーディングカードゲームのトレンドについて解説したほか、これらの取引の際に売り上げを伸ばすためのコツが紹介された。また、真贋鑑定・グレーディングサービスを展開するPSAがゲストとして登場。トレーディングカードの取引における第三者機関の重要性について語られた。
ミレニアム世代のコレクター化と投資家の存在
従来、トレーディングカードの取り引きはコレクター間で活況な領域の一つだった。特に、マジック:ザ・ギャザリングやスポーツ系のカードは人気が高く、高価な取引がされていたという。しかし、イーベイ・ジャパンによれば、ここ最近、ポケモンカードの市場規模が、かつての人気トレーディングカード市場の成長率を大きく超えるほどの拡大を見せているという。
そもそもイーベイが主戦場としてい米国を中心とする北米地域では、近年トレーディンカードカテゴリ自体の取引件数や出品件数が急増している。カテゴリーマネジメント部の中里力部長は、「(米国における)成長率は前年比142%で、一年間で400万枚以上のカードが取り引きされた」と語る。今年の1月から3月までのカテゴリ全体の成長率は前年比833%で、イーベイ全体での売れ筋ランキングでトップ5の内、4アイテムがトレーディングカードだった。
その中でも、ポケモンカードの成長率は1年で574%。中には、1枚で約4000万円で落札されたカードもあったという。特に人気なのは、日本語版で1996年から98年に販売されたいわゆる“初代”のカードだ。ちなみに、初代の他にも直近発売されたばかりの新作も人気が高いという。
もともとポケモンカードは一部のコレクターに人気ではあったものの、これほどの市場を形成するパワーはなかった。現状の背景には、コレクターの年齢層の変化があるとされており、ポケモンの人気が高いミレニアム世代がコレクターとして活動することが多くなったために需要が高まっているという。さらには、投資家が需要の高まりに目を付けたことが状況に拍車をかけている。
また、ウェビナーでは主に米国からの需要が高まっているという解説だったが、これらの特徴は欧州や豪州といった、ポケモンが流行した地域全般で共通しており、全世界的な流れだという。イーベイ・ジャパンによれば、今後もこの状況は継続するとみられ、今後数年はカードの高騰が続く可能性が高いと見込んでいる。
ポケカ取引市場は競合多数もいまだ参入余地あり
今回のウェビナーでは、イーベイにおけるトレカのトレンドとともに商材としてトレカを扱うメリット・デメリットや購入率を上げるためのポイントなどについても解説された。
まず、トレカ販売のメリットについてカテゴリーマネジメント部の市田良介アカウントマネージャーは「販売・参入しやすい商材であること」「配送しやすく送料が安いこと」「在庫スペースを取らないこと」の3点を挙げる。先述の通り、現在のトレカ市場は急速に拡大しているほか、商材自体が薄く、小さく、軽いことからコストを抑えることができる。
一方で、デメリットとして「競合が多いこと」と「知識が必要になること」が挙げられた。しかし、市田アカウントマネージャーは「正直、競合は多い。しかし、その分、需要も非常に高い」と指摘する。特に、日本からの出品はまだ少なく、シングルカードのまとめ売りやシングルカードとパックの抱き合わせ販売が足りておらず、参入の余地は残されている。
知識面に関しては、他カテゴリと比べるとそこまで知識は必要ないという点が指摘された。「カメラや音楽機器などは商材の性能を理解している必要があるが、トレーディングカードゲームの場合は価値の高いキャラクターや種類といった、市場や相場の理解で済む」と市田アカウントマネージャーは強調した。
イーベイ全体でのポケモンカードの人気キャラクターと日本からよく売られているキャラクターには、少々乖離があるのも注目すべき点だ。イーベイ全体では、1位からリザードン、ピカチュウ、ミュウツー、カメックス、レックウザの順番で人気が高いのに対して、日本からはピカチュウ、リザードン、カメックス、ミュウツー、ミュウの順番で出品が多いという。これらの相場を意識することで、効果的な販売活動につながる可能性は高い。
その他、市田アカウントマネージャーからはインプレッション(検索表示回数)の重要性や出品時に記載しておくべき情報についての解説がされた。カテゴリ設定やタイトル、写真画像などを正確に記載することでインプレッションを上げ、購入につながるという。
第三者の存在が取引をフェアにする
ウェビナーの後半には、トレーディングカードの真贋鑑定とグレーディングサービスを展開するPSAから日本支社のトニー・アラム代表が登壇した。
同社はもともと、収集品の真贋鑑定・グレーディングを行う米コレクターズユニバースの一部門だった。日本支社は18年に設立され、PSA全体で既に5000万点のトレカを鑑定しているという。ちなみに、その内ポケモンカードの鑑定数は170万点。同社の実績から見ても、ポケモンカードの需要は非常に伸びていることが分かる。
またアラム代表によれば、近年はコロナ禍もあって莫大な数の依頼が殺到しているという。「99年から年間約100万点のアイテムを鑑定してきたが、20年に入って大きく伸び約480万点を鑑定した。21年はさらに爆発的な申し込みがあり、1000万アイテムの鑑定が予想される」という。
現在、同社の米国におけるシェアは約85%。これは、市場からの信頼の高さを意味するとアラム代表は強調する。「もしPSAのような第三者がいなければ、カードが持つ価値を一目で判別できない。売り手と買い手との間で難しい交渉や長い議論が交わされ、スムーズな販売がされない。また、悪質なディーラーなどに偽物をつかまされる可能性もある。PSAによって、フェアなトレードが可能になった」と、第三者機関の重要性を語った。
提供元・BCN+R
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