監視カメラ映像というと、どんなイメージが湧くでしょうか?
粒子が荒い、解像度の低い映像に、場合によってはモノクロの映像。
そんなイメージではないでしょうか。
確かに、高速道路の事故、コンビニなどの強盗事件などで、よく登場する決定的瞬間を収めた監視カメラ映像は、大抵の場合非常に画質が悪いという印象があります。
ライブカメラの画像などは、ネットでいつでも誰でも閲覧できますが、こちらもかなり荒い画質のものがほとんどです。
高画質の監視カメラは存在しないわけではありませんが、携帯電話のカメラでさえかなり前から高画質が当たり前になっている現代で、なぜこうした映像はいつまで経っても低画質なのでしょう?
1つは、監視カメラには必ずしも高画質で色まで記録できる必要はない、ということがあります。
事件の犯人の顔とかきれいに映ってたほうがいいじゃない、と思うかもしれませんが、それよりも監視カメラに求められるのは暗い場所で暗い服を着た人を見分けるなどの撮影なのです。
通常のカメラは、こうした暗い状況をきれいに撮るということは困難です。
多くの監視カメラは、暗い領域を映すために赤外線技術を搭載しています。
こうした技術的に求められていることの差が、画質に差を生む原因です。しかし、もっと影響を与えているのは、技術的な問題よりも人間の心理的、経済的事情の方なのです。
別に撮ることが目的じゃない
監視カメラの多くは特に撮影を目的にはしていません。監視カメラは、ほとんどは誰も関心を向けない空間に向けられています。そんな映像を4Kの高品質で記録したいと、設置者は考えないのです。
監視カメラは大抵の場合、撮影自体よりもそれを設置することで生まれる犯罪抑止力が期待されています。
店舗の監視カメラは、万引や強盗を思い留まらせることが目的で、あとから撮影映像を利用することは稀です。
たまに決定的瞬間が収められることはありますが、これはたまたま映ったというだけで、何もスクープも狙ってずっと監視カメラが向けられているわけではないのです。
ほとんどの監視カメラは、何も起こらない無意味な映像を記録し続け、見返されることさえ一度もなく終わるでしょう。
そう考えると、高画質は監視カメラにとって、まったく無用の長物となるのです。
テレビやYoutubeで、事件や事故の決定的瞬間が、不鮮明な低画質で収められているのを見ると、「もっときれいに撮れないのか」とイラッとしてしまいます。
しかし、それはたまたま映ったから公開されただけで、本来見返すことなど想定されていないのです。
費用対効果
監視カメラは、長期間メンテナンスせず放置されることになるカメラです。レンズやセンサーが高品質なものになり、高いテクノロジーに支えられた機器になった場合、メンテナンス無しで長期間の使用に耐えることは難しくなります。
個人が自宅の前などに監視カメラを設置する場合、ちょっと高くて高画質なカメラを買おうか? と考える場合もあるかもしれません。
しかし、大抵の監視カメラは大きなビルやショッピングモールなど広い範囲に大量に設置されることになります。
ハイエンドのカメラだと一台10万円を超えてしまう場合もあります。そうなったときに、企業や行政はハイエンドで頻繁なメンテナンスを必要とするカメラを大量に買おうと考えるでしょうか?
当然、安くて要望を満たせる品質で、耐久性などを重視して購入するでしょう。
画像圧縮による劣化
スパイ映画などを見ていると、監視カメラは撮影された映像を常に誰かが監視しているようなイメージを持ってしまいますが、実際は誰にもチェックされることなく撮りっぱなしで長期間放置されます。
24時間録画を続ける基本的なカメラは、1日で約1テラバイトのデータ容量を消費します。それを数十から数百も数週間保存すると、とてつもないデータ容量を消費することになります。
大抵の企業は1~2日で記録を削除して上書きしますが、イギリスでは利用者の多いロンドン駅の映像を28日間も保存しています。
そのため、かなり画質を犠牲にして撮影データを圧縮して保存する必要が出てくるのです。転送する場合も、回線に負担を掛けないようにかなり圧縮されるでしょう。
これも、低画質になる大きな要因です。
監視カメラを設置するとプライバシーがなくなるという人たちもいますが、監視カメラ映像は何も事件が起こらなければ、大抵は2,3日で誰に見られることもなく削除されるだけなのです。
技術進歩は無関係
8Kテレビや、スマートフォンの高品質カメラなどが身近にあふれてくると、どうしても監視カメラの極端に低画質な映像に対して、「なんで今どきこんな画質で撮ってるんだ?」と疑問が浮かんでしまします。
しかし、いくら技術が進歩しても、必要なければ使わないというのが人間の選択なのです。
スクープ映像は高画質でみたくなりますが、撮影した監視カメラにしてみれば、「べ、別に撮りたくて撮ったんじゃないんだからね! たまたま映っちゃっただけなんだから、勘違いしないでよね!」という感じなのではないでしょうか。
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功