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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

日本には美しい四季がある。春はみずみずしい緑を感じに低山を歩き、夏は遠くの稜線で爽やかな風を感じて、秋になったら畑で収穫した野菜とともに焚き火を囲み、そして、冬。そうだな、冬は澄んだ星空の下にテントを張って、薪ストーブの暖気を感じながらぬくぬくと眠りにつきたい。

ケータイデンワとかパソコンとか、電子機器の呪縛から解放されて、自然と意識を手放しながら身を深くシュラフに沈めたい。なーんにも考えずに……。
 

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キャンプ場からは標高2,568mの浅間山がよく見える。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

早朝の都内をするりと抜け出し、待ち合わせ場所の駐車場へ車を停めると、ひと足先に着いていたヒナちゃんがひょっこりと顔を出した。「リエちゃんおはよ。今日は晴れてよかったね」「夜はかなり寒くなりそうだけど、ヒナちゃんの料理があればあったかくなりそうだな~」

今回のキャンプテーマは、焚き火料理とちょこっと雪上ハイク。日頃フードスタイリストとして活動しているヒナちゃんを料理長にむかえ、そこに八ヶ岳の山小屋で知り合った旅好きのレレちゃんが加わり、女子3人の冬キャンプが幕を開けた。

向かった先は、北軽沢にある「スウィートグラス」。充実した施設やロケーションの良さなどから、夏の繁忙期はとくに予約が取れないという関東近郊屈指の人気キャンプ場である。
 

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焚き火に欠かせない薪は場内の売店で調達OK。ほかにも炭や着火剤、ホワイトガソリンなどの消耗品も購入できるので安心だ。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

この日の積雪量は想定していたより少なかったが、状況に応じて除雪や圧雪を行なってくれるので冬キャンプ初心者でも利用しやすい。

それに、開放的で眺めがいいところも魅力的だ。3万坪もある広大なフィールドは、都会の喧騒を離れ自然を満喫するにはもってこいで、天気がよければ浅間山を間近に眺められる。

さらに「ノーマルサイト」や「林間の直火広々サイト」、「フリードッグサイト」などテントサイトの種類は6つあり、積雪状況によっては利用できない日もあるそうだが、好みによって選べる点もいい。今回は冬の星空観察も楽しみたいと思っていたので、わたしたちは「星見広々サイト」をチョイスした。

「くぅー、きもちいい!」。ホワイトな雪原とクリアブルーの空。そこに挟まれて行なう背伸びと深呼吸。あぁ、この2日間で怠惰な日々の生活とゆがんだココロを一掃してしまいたい。

腹空かざる者、焚き火するべからず!? スキーシューで雪上散策へゴー!

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歩けて、登れて、滑れる新感覚の魔法の板がコレ。ビンディング部分がラチェット式でどんなブーツでも装着でき、板の裏の中心にシールのような滑り止めがついている。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「ねえねえ、これやったことある?」。ごはんの準備に取りかかる前に、お腹を空かせるという名目もかねてちょっとしたアクティビティーをすることにした。じつは今回、専用のブーツを履かなくても雪上を手軽に歩いたり滑ったりできるスキーの板を持ってきていたのだ。
 

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使用したのは「OAC(オーク)」というメーカーのもの。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「すごーい!簡単に歩ける」「スノーシューとクロスカントリースキーの要素を足して2で割ったような感じ?っていうのかな」「スキーシューとも言うらしいよ」
 

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スキーをやったことがなくてもすぐに歩けちゃう“スキーシュー”で、だだっ広い雪上をスイスイお散歩。ちょっとしたプラスαの遊びを盛り込むことで、冬のキャンプはより一層楽しくできる。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

両足の板を交互にスライドさせながら、広大な雪原をのんびりと歩く。ふたりの足取りはとても軽く、吐く白い息とともに弾んだ声が空へと吸い込まれていく。ずっとテントの中でぬくぬくとすごすのもいいけれど、せっかくフィールドにいるならちょっとした散策も味わいたい。
 

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初めての体験にふたりは声を揃えて「これおもしろい~!」。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「森の動物たちの足跡を見つけることもありますよ」と教えてくれたのは、スウィートグラスでフィールドインストラクターを務める萩原翼さん。過去にインドネシアでサンゴ礁の調査をしていた経験があるほど、とにかく自然が大好きだという彼に案内をしてもらいつつ、わたしたちは雪上ハイクをしばし満喫!

準備さえしっかりすれば、冬のキャンプは心配無用

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薪はこんな風にすると女性でも運びやすい。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

適度な運動をしたあとは、今宵の寝床づくりだ。まずはテントを建てるスペースの雪を踏み慣らし、なるべくフラットになるように固めていく。この作業が雪上キャンプのキモで、これをきちんとやるかやらないかで、テントの中での快適さが大きく変わる。
 

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用意したテントはノルディスクの「ナンド」。出入り口が大きく、複数人での使用も快適。ペクダウンと1本のポールを立てるだけで完成する。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

今回は女性だけでも建てやすいようにワンポール式のテントを用意。その甲斐あって、寝床はあっという間に完成した。設営で余分な体力を使わない、手間がかからないというのは、冬のキャンプでとくに重要な要素かもしれない。〝寒さ〞はいろいろな作業を億劫にしてしまうけれど、ラクチンなことなら腰も重くはならないのだ。

ちなみにレレちゃん、本格的なキャンプは今日が初体験。かつてチベットの大学に2年間、語学と絵の勉強をするために留学していた経歴をもつ彼女は、草原に建つ遊牧民のゲル(いわゆる組み立て式の家屋)に寝泊まりすることはあったものの、こういったキャンプは初めてだとか。

「もちろんゲルには水道なんてないから、衛生面でキツくって。中はヤクの糞を乾燥させたものをストーブで燃やしていて牧草のいい匂いがするんだけどね、わたしには2日間が限界だったなあ。だから今日も少し心配だったんだけど、これなら数日いても快適にすごせそう!」と、どうやら気に入ってくれたようだ。

焚き火とおいしいごはん。冬はやっぱりこれに尽きる!

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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「さてと、寒くなってきたし、火を熾しながらゆるゆると夜ごはんの支度でもはじめよっか」「そうだね。でもその前にコーヒー飲みたくない?」「あ、飲みたい、飲みたい!」

時間に追われるでもなく、こうして自分たちの気分次第で、自由にすごす。そんなキャンプがわたしはたまらなく好きだ。
 

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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

すっかり日は沈み、辺りはより一層静まり返っている。夏と比べて、冬の夜は長い。空も空気も、深く、そして鮮明に濃い気がするのは、いったいどうしてなのだろう。

外の焚き火台とテントの中の薪ストーブの火の番をしているうちに、あれよあれよという間にテーブルが華やかになった。
 

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焚き火台のほか薪ストーブの熱も有効活用すれば、一度に多くの調理ができて時短に。ゆっくりと時間をかける煮込み料理などに最適。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「家でキャンプごはんの下準備をしているときから、キャンプがスタートしている感じがするの」とヒナちゃんは言う。メニューを考えるところから始まって、食材を買い出しして、できる下準備は済ませておいて。

実際の滞在は1泊2日だとしても、料理を楽しむキャンプというのは、滞在時間以上の充実感とワクワク感があるのだとか。
 

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みんなでごはんを作ったり、おしゃべりしたり、ごろんと寝転んだり……。テントの中は薪ストーブの暖気とともに心地よい時間が流れ、非日常的空間に様変わりだ。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「いただきまーす!」「ねぇこの玉ねぎのスープ味付けどうやってるの?めちゃくちゃ美味しいんだけど!」「焼き目がつくまでバターでじっくり焼いてから煮込むのがポイント。日々の食卓ってあまり時間をかけられなかったりするけど、ゆとりがあるキャンプなら普段できない料理が作れるからね、ついつい煮込みたくなっちゃうの」

「その気持ち分かる~。それにダッチオーブンの上火は無敵だよね!」「そうそう!上火が美味しさの秘訣になっている気がするよね」「ラザニアも、フムスも絶品~」
 

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今宵のヒナ’sキッチンは、ラザニア、新玉ねぎのホタホタスープ、フムスのピンチョスに、グリル野菜。レンコンはヒナちゃんが収穫したそう。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

箸とアルコールの入ったグラスを交互に進めながら、あれやこれやとおたがいの話に花が咲いていく。ヒナちゃんの旦那とのコイバナ、レレちゃんがこれまでしてきた旅の話や、わたしとレレちゃんが偶然出会った山小屋でのエピソード。薪ストーブの火が熾るように女子トークも盛り上がり、どんどん器が空いていく。
 

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焚火と並ぶ冬キャンプの必需品、薪ストーブ。天板は湯沸かしにもちょうどいい。(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

ふとトイレに行きたくなってテントから這い出ると、自分に降ってくるかのような星空に圧倒されて、「あ!」と思わず声が漏れた。

すごい。すごい。宇宙が身近に感じとれてしまうくらい、リアルで鮮明な星空だった。毎日の生活にも、夏の夜空にもない、すべてが眠っているかのような静けさ。ひっそりとしているようで、堂々とそこに居座る夜闇。

ねえちょっと、みんなも外に出ておいでよ。これが冬のキャンプ最大の醍醐味ってやつなんじゃない? 寒いけどキャンプをしに来てよかったって思える景色。頭上にはそんな世界が弧を描くように、ただただ広がっていた。

翌朝、もぞもぞとシュラフから抜け出し、ふたたび火を熾す。ふたりもぐっすりと眠れたようで、なんだかとてもいい表情をしている。
 

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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

「冬キャンプっていいもんだね」。こんな風にして四季折々の楽しみ方ができる人生って、きっと一生退屈になることはないんだろうな。そんなことをぼんやり考えながら、焚き火の前で朝のコーヒーをすすった。
 

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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

インフォメーション

北軽井沢スウィートグラス

広大な敷地に約30以上の多種多様なコテージやキャビン、テントサイトがありどんなスタイルで冬の大自然を味わうかは自分次第。薪ボイラー式の貸切風呂もアリ!
 

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(画像=FUNQ/フィールドライフより引用)

群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢1990-579
TEL.0279-84-2512
料金:1サイト¥3,000~
営業期間:通年
http://sweetgrass.jp

出典
フィールドライフ No.54 2016 冬号

フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。

CREDIT :
文◎山畑理絵 Text by Rie Yamahata
写真◎猪俣慎吾 Photo by Shingo Inomata
取材協力◎北軽井沢スウィートグラス、ミヤコスポーツ(オーク)

提供元・FUNQ/フィールドライフ

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