米・ジョージア工科大学の最新研究により、瞳孔のサイズが知能の高さと関係していることが示されました。

実験結果では、瞳孔が大きい人ほど、記憶、推論、注意力を測定するテストで高スコアを記録したとのことです。

なぜ瞳孔と知能が関連するのでしょうか。

研究は、3月10日付けで『Journal Cognition』に掲載されています。

目次

  1. 「瞳孔が大きいほど、知能が高い」という結果に

「瞳孔が大きいほど、知能が高い」という結果に

研究チームは当初、記憶作業にかかる精神的労力の度合いについて調査しており、その指標として「瞳孔」を測定していました。

人の瞳孔は光の他に、心刺激や精神疲労によっても大きさが変わります。

この測定法は、アメリカの心理学者ダニエル・カーネマン氏(87)が1960~1970年代に確立した手法です。

そして測定中に、瞳孔サイズと知能の関連性が示唆されたため、チームは、ジョージア州・アトランタ在住の被験者500人(18~35歳)を対象に本格的な調査を開始。

まず、被験者の前に全面白のスクリーンを置き、安静時の目を約4分にわたりアイトラッキングし、瞳孔の直径の平均サイズを出しました。

結果、直径のサイズ幅は2~8ミリでした。(ちなみに、瞳孔サイズが光刺激にあまり左右されないよう、薄暗い部屋で測定されています。)

「瞳孔のサイズが大きいほど知能が高くなる」という研究結果
(画像=瞳孔の平均サイズは2〜8ミリ、Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

次に、被験者の知能を測定するため、新たな情報を獲得し、すばやく処理する「流動性知能」と、情報を一定時間にわたり保持する「ワーキングメモリ容量」、集中力の持続力を示す「注意制御能力」のテストを実施しました。

これを瞳孔サイズと照らし合わせた結果、瞳孔の平均サイズが大きい被験者ほど、各知能のスコアが高いことが示されたのです。

研究チームは「各テストの最高得点者と最低得点者の瞳孔を比較すると、見た目で分かるほどサイズに差があった」と話しています。

では、なぜ瞳孔が大きいほど、知能が高くなるのでしょうか。

この点について、研究チームは「青斑核(せいはんかく、Locus ceruleus)という脳部位が関係しているのではないか」と推測しています。

青斑核とは、脳幹の上部に位置し、他の脳領域と広く接続されている神経核のことです。

「瞳孔のサイズが大きいほど知能が高くなる」という研究結果
(画像=青斑核(中央やや下、緑の楕円形)、ノルアドレナリン神経の分布(緑のライン)、Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

青斑核は、神経伝達物質やホルモンとしても機能する「ノルアドレナリン」を分泌し、これは脳の注意力や衝動性、記憶力の制御に大きく関わっています。

また、青斑核が機能不全に陥ると脳が組織的に働かなくなり、認知症やADHD(注意欠如・多動症)などの原因にもなります。

実は、この脳の組織的活動はとても重要で、何もしていない時、例えばパソコンの真っ白な画面を何分も見続けている時でも、脳は組織力を維持するためにエネルギーを費やしているのです。

一方で、瞳孔サイズと知能の関係はまだ調査段階であり、青斑核が関与しているかどうかも断定できません。

それでも研究チームは、仮説の一つとして、「安静時の瞳孔が大きい人は、青斑核による脳活動の制御力が大きく、それが認知機能の向上につながっている可能性が高い」と考えています。

「目は心の窓」と言われますが、これとは別に、「頭脳の窓」でもあるかもしれません。

参考文献
Pupil Size Is a Marker of Intelligence

元論文
Is baseline pupil size related to cognitive ability? Yes (under proper lighting conditions)

提供元・ナゾロジー

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