リンゴには人間の頭を良くする成分が入っているようです。
2月11日に『STEM CELL REPORTS』に掲載された論文によれば、リンゴに含まれる化合物には神経細胞を増加させ、アルツハイマー病の症状を改善する効果があるとのこと。
リンゴには、いったいどんな秘密が隠されているのでしょうか?
リンゴは「リアル知恵の実」だった
近年、植物に含まれる栄養素を最新技術で改めて分析し、生物に対する効果を再評価する試みが増えています。
特にリンゴに対しては注目度が高く、2003年に行われた研究では酸化ストレスの有害な副産物を中和する作用が発見され、2005年に高齢の動物を対象にした実験では、リンゴの補給が認知機能の改善と抗酸化作用が脳細胞の損傷を防ぐことが示されました。
また2010年に行われた研究ではリンゴジュースの消費がアルツハイマー病の症状を改善したことが報告されている他、2015年に行われた研究ではリンゴは神経突起の伸長とニューロンの成熟を促進する作用が報告されているなど、21世紀になってから次々と有益な効果が発見されています。
そこで今回、ドイツ神経変性疾病センターの研究者たちは、これらさまざまなリンゴの効果の背景に、神経細胞の新生が関わっていることを証明しようとしました。
本当にリンゴには、脳細胞を増やすような素晴らしい効果があるのでしょうか?
リンゴは脳細胞を増やす効果がある
リンゴの効果を確かめるにあたって研究者たちが着目したのは、抗酸化作用・抗炎症作用・抗動脈硬化作用・脳血管症予防・抗腫瘍作用、降圧作用、高い血管弛緩作用など、人に有益な効果を多く持つ健康物質「ケルセチン」でした。
リンゴにおいてはケルセチンは皮の部分に多く含まれていることが知られています。
今回研究者たちはまず、リンゴから抽出したケルセチンと、同じくリンゴから抽出されたDHBA(ジヒドロキシ安息香酸)を、げっ歯類の脳から取り出した幹細胞に加えてみました。
結果、ケルセチンとDHBAの両方に新しいニューロンの生成を促し、細胞死を防ぐ効果がみられました。
この結果は、リンゴに含まれる健康物質が神経発生と呼ばれるプロセスに有意にプラスの効果を与えていることを示します。
ただし、この結果は生きている動物の体で起きたわけではありません。
培養した細胞で起きたことが生きている動物でも必ず起こるとは限らないのです。
そこで次に研究者たちは、リンゴから高濃度のケルセチンとDHBAを抽出し、マウスの口に、それぞれの物質を流し込みました。
結果、マウスの脳では幹細胞が増加し、より多くのニューロンが生成されていることが示されたのです。
またニューロンの生成量を測定した結果、適切な運動を行った時と同程度の増加量であることも示されました。
有用な成分が植物に多いのは植物の進化の結果ではなく、動物側の適応の結果だった
今回の研究により、リンゴに含まれるケルセチンとDHBAに脳細胞を増やす効果があることが示されました。
しかしどうして植物に含まれる化合物が、私たちの脳にとって多くの有益な成分を含んでいるのでしょうか?
その答えを研究者たちは、私たちの先祖が植物を食べながら進化した過程にあると考えています。
この理論では、私たちの先祖は長年にわたり植物と共にあったために、植物からカロリーだけを吸収する単純な形態から、植物に含まれる他の物質も、自らの健康向上に利用できるように進化したとされています。
この説が正しい場合、ジャンクフードばかりで植物を食べない生活は、見えない部分で大きな不利をかかえることになりそうです。
もし体に不調を感じるならば、植物を食べるという選択肢が、解決策になるかもしれませんね。
参考文献
Compounds from apples may boost brain function
元論文
Apple Peel and Flesh Contain Pro-neurogenic Compounds
提供元・ナゾロジー
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