私たちにとっては馴染み深い食べ物でも、ペットに与えると有害なものは数多くあります。
玉ねぎはその代表ですが、チョコレートも犬のおやつとして与えるには不適切な食べ物です。
私たちにとって楽しみなおやつも、残念ながら動物にとっては毒になってしまうとのこと。
その理由とはいったい何なのでしょうか?
犬に有害なチョコレート
チョコレートは人類にとって、食べすぎても肥満と虫歯くらいしか心配する必要のないお菓子ですが、犬に与えた場合強い毒性を示します。
チョコレートを食べた犬は、腹痛のような症状を示し、嘔吐してしまいます。過剰摂取した場合には最悪死に至ることもあるのです。
実は人間でも、チョコレートを大量摂取した場合、発汗や頭痛など悪影響が出るのですが、それは非常識なくらい大量に食べた場合の話です。普通にしていたら、まずその症状を体験することはありません。
なぜチョコレートが毒になってしまうのか?
チョコレートの原料であるカカオには、その苦味の成分でもあるテオブロミンが含まれています。
テオブロミンは「メチルキサンチン類」に属するアルカロイド(有機化合物)で、カフェインなどの神経刺激物質の仲間です。
コーヒーやエナジードリンクによってカフェインを摂取すると、頭がすっきりして疲れが取れた気分になりますが、これはメチルキサンチン類が、体内の「アデノシン受容体」をブロックしているためです。
私たちが疲れると体内でアデノシンという物質が増加してきます。このアデノシンがアデノシン受容体と結びついて脳にシグナルを送ると、心拍数が下がり体がリラックスした状態になります。
疲れた状態というのは、このアデノシン受容体の作用で体の活動が低下している状態です。なので、これをブロックすると私たちは疲れを忘れて活動できるわけです。
しかし、カフェインを摂りすぎると、中枢神経系や消化器系にダメージを与えてしまい、めまいや心拍数の増加など身体に悪影響がでて最悪死んでしまいます。
そしてチョコレートに含まれるテオブロミンは、カフェインよりメチル基(-CH3)が1つ少ないだけなので、同じような覚醒作用を持っています。しかし、人間はテオブロミンの代謝能力が高いため、テオブロミンの摂取ではカフェインのように興奮することはありません。
逆に緩やかにリラックスさせる効果があるとも言われています。
しかし、犬などの動物の場合には状況が異なります。犬や猫などはテオブロミンの代謝速度が遅いためその害を受けやすくなります。
たまにエナジードリンクを飲みすぎて体調を悪化させてしまった人がニュースに登場しますが、人間のカフェイン大量摂取のようなことが、犬や猫では少量のチョコレートで起こってしまうのです。
具体的にどのくらい摂ると危ないのか?
アメリカ動物虐待防止協会(通称: ASPCA)によると、20mg/kg(体重1kgの動物に20mg)のテオブロミンの摂取で、軽度の中毒症状が現れるといいます。
犬は落ち着きがなくなり、多動性になって激しい喘ぎや筋肉の痙攣を起こすことがあります。そして初期症状に下痢や嘔吐、意識混濁、吐血など現れはじめます。
テオブロミンの代謝は遅いため、この症状が現れるまでには最大24時間もかかる場合があります。
慢性的な兆候は約40mg/kgから始まるといい、約60mg/kgを摂取すると発作や心不全を起こして死に至る可能性が出てきます。
もし誤って犬がチョコレートを食べてしまった疑いがあるときは、急いで獣医さんに見てもらったほうがいいでしょう。
猫も犬同様チョコレートが毒になるのですが、完全に肉食獣である猫は甘味を感じる味覚を持っていないため、犬のように甘いものには基本的に興味を示しません。
そのため、あまり神経質にならなくても差し迫った危険はないようです。
危険なチョコレートの摂取量は、動物の体格によって変わってくるので、チョコが犬に良くないとはいっても大型犬の場合は食べても症状が現れにくかったりします。
しかし、小型犬の場合はちょっと食べただけでも命に危険が伴います。
犬を飼っている人にとっては「そんなの常識だよ」という話かもしれませんが、犬を飼っていない人は友達の家で、犬におねだりされても、チョコをあげないように気をつけなければいけませんね。
参考文献
scienceabc
提供元・ナゾロジー
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