ヒトを含めた動物が立っていられるのは、丈夫な骨があるからです。
それに対して、植物は骨もないのに空に向かってまっすぐ立っています。
これはなぜでしょうか?
また、キレイな花を咲かせる丈夫な植物を育てるにはどうすればよいでしょう?
植物が立つのは「細胞壁」のおかげ
まず植物が立つ理由を考えてみると、「根っこ」という答えが浮かびます。
確かに、根っこは地上の茎を支える働きをしていますが、あくまで小さな理由にすぎません。
植物の茎は根っこを切っても、土にさせばちゃんと立つからです。
そうではなく、植物が立つのは「細胞壁」のおかげ。
植物のからだは、ヒトや動物と同じく、たくさんの細胞でできています。
しかし、決定的に違うのは、ヒトや動物の細胞が「細胞膜」という薄い膜で囲まれているのに対し、植物は「細胞壁」という厚くて堅い壁に囲まれている点です。
細胞壁は、細胞内にある核や葉緑体、ミトコンドリアなどを保護する役目を持ちますが、からだを支えるという重要な働きをします。
つまり、植物は、堅い細胞壁を持つ細胞をつみ重ねて育つために、骨がなくてもまっすぐ立っていられるのです。
ちなみに、植物の細胞壁を取り除くと、細胞は丸いボール状になってしまい、この状態を「プロトプラスト」と呼びます。
丈夫に育てるコツは「なでる」⁈
植物のタネは、上にかぶさっている土を押しのけて芽を伸ばさなければなりません。
実は、この土に触れるという刺激が、茎を太く短く丈夫にする秘密なんです。
かぶさっている土が多ければ多いほど、植物はますます強くなって、地上に出てきます。こうした刺激を「接触刺激」と呼びます。
接触刺激は、植物のからだの中に「エチレン」という気体を発生させるのですが、これが茎の伸びを抑えて、短く太くする効果を持つのです。
これと対照的なのがモヤシで、モヤシは土ではなく暗い箱の中で育てられるので、ヒョロヒョロしています。
なので、自宅の植物を丈夫に育てるには、定期的に茎や葉っぱをなでると効果的なんです。
植物はなでられると接触刺激を感じて、エチレンをつくり、背丈が低くたくましい姿に成長します。
これがキレイな花を咲かせるコツです。
「あまりベタベタ触るとキレイな花が咲かない」と思われがちですが、植物というのは、自分が支えられる大きさの花を咲かせます。
支えきれないサイズの花を咲かせると、倒れてしまうからです。
そのため、まったく触られずに育った植物は、モヤシのようにヒョロッと細長くなって、小さな花を咲かせます。
反対に、よくなでられた植物は太くたくましく成長し、大きな花を咲かせるのです。
気になった方は、同じタネを2つ買って、片方をなでずに、もう片方を毎朝なでて育ててみると良いかもしれません。
参考文献
『植物学「超」入門』(田中修著、SBクリエイティブ株式会社、2016年)
提供元・ナゾロジー
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