猫が「ニャー」と鳴くのは人間に対してだけのようです。

『Behavioural Processes』に掲載された論文によれば、猫たちが発する一般的な「ニャー」という鳴き声には、注意喚起や要求、挨拶など様々な意味合いが含まれているものの、同種の猫に対して発せられることはまれだとのこと。

「どうして猫たちは、仲間には使わない鳴き声を、人間に向けて発するようになったのでしょうか?」

その答えは猫の家畜化に関係していると専門家は語りました。

人間には「匂いのマーキング」が通じない

野良猫は「ニャー」と鳴かない
(画像=人間の所有物は猫にとって自分の縄張り範囲にあるものである / Creditcanva、『ナゾロジー』より引用)

猫が人間の生活圏に入り込むんだのは、およそ1万年前。

広大な砂漠地帯に住んでいた野生の猫は、同じ種のメンバーに出会うことは極めてまれであり、コミュニケーションをとるために声を使う必要がありませんでした。

代わりに野生の猫たちがコミュニケーションに用いたのは自分の臭いだったのです。

木に体をこすりつけたり排尿することで発生する匂いは、長い間同じ場所に留まり続けます。その匂いを自分をあらわすマーキングとして利用していたのです。

しかし悲しいことに、この「匂いのマーキング」は、一緒に暮らすようになった人間には通じませんでした。

人間の嗅覚は鈍く、猫の残した匂いを嗅ぎ取ることができないのです。

人間に対していくら縄張りを主張しても、人間たちは勝手に肉や魚を焼き、食べてしまいます。

猫の感覚では、これはルール違反です。

縄張りの中の食べ物は、本来なら縄張りの所有者である自分のもの。

人間たちが焼いている肉や魚が、実は遥か離れた場所から獲ってきたものであったとしても、そんな都合は猫にとって関係ありません。

しかし人間を追い出すことは猫には不可能でした。