古代バビロニアの数学をご存知ですか?

「大昔の数学でしょ?」と侮ってはいけません!彼らの数学には、21世紀を生きる私たちを驚かせるような成果がたくさんあります。

今回は、古代バビロニアの「2次方程式の解き方」を紹介します。

現代人の私たちは、文字式を駆使しながら解いていますが、古代バビロニアの人たちは、一体どんな風に解いていたのでしょうか?

目次

  1. 古代バビロニアの2次方程式の問題
  2. 古代バビロニアの2次方程式の解き方
  3. 古代バビロニアの解法の解説

古代バビロニアの2次方程式の問題

まず、古代バビロニアの2次方程式に関する問題を見てみましょう。

“例えばスーサ出土の問題集(TMS,No.6)に, 「正方形の面積から,一辺の長さの4倍が引かれて780.[一辺の長さはいくらか?];問題2.1」 という問題があり(後略)” (引用元:中村 滋,室井 和男「数学史 ―数学5000年の歩み―」p.78)

と、数学史の本に書かれています。

この問題を書き換えてみると、

「正方形の一辺の長さをxとします。この正方形の面積から4xを引くと780になります。xの値を求めましょう。」

という問題になります。いにしえの問題ではありますが、まるで中学校の教科書の例題のようです!

立式してみると、正方形の面積は「xの2乗」なので

x2 - 4x = 780

が成り立つということになりますね。この2次方程式を解いて、xの値を求めれば良いのです。

古代バビロニアの2次方程式の解き方

次に、先ほどの2次方程式

x2 - 4x = 780

を、古代バビロニア人はどのように解いたのかを見ていきましょう。

“(前略)当時の解放に倣って解いてみる.「4を半分に君は分割する.2.2と2を君は互いに掛ける.4.4を780に加えて784.その平方根は28.君が互いに掛けた2を28に君は加えて30.30が1辺の長さである.」となる.” (引用元:中村 滋,室井 和男「数学史 ―数学5000年の歩み―」p.78)

不思議な言い回しですが、どうやら答えは「30」のようです。

この古代バビロニア流の解き方を整理してみましょう。

①4を半分にして2 ②2×2=4 ③780+4=784 ④28×28=784より、784の(正の)平方根は28 ⑤28+2=30

という計算をして、「30」を導き出しているようです。

果たして、この方法で導き出した答えは合っているのでしょうか?確認してみましょう。

先ほどの2次方程式に「x=30」を代入して計算してみると……

302 - 4 × 30 = 900 - 120 = 780

見事に「780」となりました!合っていますね!

ちなみに、「x=-26」も、この2次方程式の解となります。しかし、今回の問題では、xを正方形の一辺の長さとしていたので、負の解は適していません。

古代バビロニアの解法の解説

まるで、魔法のような古代バビロニアの解法。一体、何をしているのでしょうか?現代風に書き換えながら、調べてみましょう。

前提知識は、中学校で習う公式

x2 - 2ax + a2 = (x - a)2

です。これを公式(1)とおいてみます。

では、やってみましょう!

まず、

x2 - 4x = 780

のxの係数の4を

x2 - 2 × 2x2 = 780

とします。ここが、古代バビロニアの解法の「①4を半分にして2」に対応します。

次に、両辺に「2×2」つまり「2の2乗」を加えます。ここが、古代バビロニアの解法の「②2×2=4」と「③780+4=784」に対応します。

x2 - 2 × 2x + 22 = 784

この式を(2)とおいてみます。

ここで、公式(1)を使ってみましょう。公式(1)に、「a=2」を代入すると

x2 - 2 × 2x + 22 = (x - 2)2

となりますね。この式を使うと、(2)の式は

(x - 2)2 = 784

と書くことができます。「(x-2)を2乗すると、784になる」という式が出てきました。

ここで、「2乗して784になる数」つまり「784の平方根」を求めると、「28と-28」となります。

つまり

x - 2 = 28, -28

ということになります。ここが、古代バビロニアの解法の「④28×28=784より、784の(正の)平方根は28」に対応します。

最後に、両辺に2を加えると

x = 30, -26

となり、2次方程式の解が導き出せました。ここが、古代バビロニアの解法の「⑤28+2=30」に対応します(※今回、xは正方形の長さだったので、xは正でなければなりません。よって、「30」が答えとなります)。

この解き方、中学校や高校の教科書で見たことがありませんか?私たちが「平方完成」と呼んでいる方法です!

古代バビロニア人は見事に「平方完成」を使って、2次方程式を解いていたのでした。いにしえの数学、しっかり現代に繋がっているんですね。

参考文献 中村 滋,室井 和男(著)「数学史 ―数学5000年の歩み―」(共立出版株式会社)

文・ライター:みのきち 編集者:やまがしゅんいち/提供元・ナゾロジー

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