人類の平均寿命は、今でこそ、80歳に達していますが、それは20〜21世紀に入ってのことです。
創世記からそれまでの期間、人類の平均寿命は25歳でした。
ところが、科学技術や医療の進歩にともない、平均寿命も右肩上がりに延びてきました。衛生環境の改善や浄水(飲料水)が手に入りやすくなったこと、抗生物質の開発やガン・心臓病への治療法の誕生など、長寿化に貢献した進歩は枚挙にいとまがありません。
さらに、医療技術は現在進行形で進化しており、まだまだ長寿化は続いています。
そして近年、人類は長寿化が老化のスピードを超える「寿命回避速度(longevity escape velocity)」の時代に突入するだろうと言われ始めています。
人類は「死なない時代」に突入する?
医療の進歩は現在、寿命延長という枠内にとどまらず、不死の領域にまで足を踏み入れようとしています。
人工知能やロボット医療、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、そしてテロメアの消耗を止める研究など、老化そのものをストップさせようとしているのです。
また、3Dプリント技術による人工臓器の開発にも注目が集まります。2023年には実用化が始まると見られ、研究者は「2028年頃には、臓器の機能不全による死がほぼ完全に克服されるだろう」と推測しています。
こうした医療の進歩速度を分析した上で、アメリカの未来学者レイ・カーツワイル氏は「人類は、あと10〜12年で、寿命回避速度に突入するだろう」と指摘します。
寿命回避速度とは、医療の進歩にともなって長寿化が加速し、老化の速度を超えることです。つまり、寿命の延びが老化速度を追い抜いてしまうので、人類は(事故死などを除き)永遠に死なないということになります。
カーツワイル氏は「医療の進歩が老化の線を追い抜く時期があと10年ほどで来る」と言うのです。
氏の言う通りなら、あと10年ちょっと生き延びれば、人類はみな病気では死ななくなるというわけです。
かくいうカーツワイル氏は、かなりの健康志向とのことで、消化器官になるべく負担をかけずに栄養を摂取しようと、1日200錠のサプリを服用しているとか。
氏は1948年生まれの72歳。生きているうちに寿命回避速度に突入する日は来るのでしょうか。
そもそも長生きしてまで生きたい世の中かどうかは疑問の余地があるかもしれませんが…。
提供元・ナゾロジー
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