頭痛持ちの人は、天気が悪くなるとひどい頭痛に悩まされます。
では、なぜ天気が悪いと頭痛になるのでしょうか? 頭痛を軽減する方法はありますか?
イギリス・ダラム大学神経科学部のアマンダ・エリソン教授は、この疑問に対して科学的に回答しています。
悪天候による頭痛の原因は「副鼻腔」と「脳の血流」
エリソン教授は、悪天候によって頭痛が生じる主な要因を2つ挙げています。
1つ目は、副鼻腔(ふくびくう)です。
副鼻腔とは鼻の穴の周りにある4つの空洞のことであり、通常空気で満たされています。
そのため気圧が変化すると、副鼻腔圧のバランスが崩れ、炎症や痛みを引き起こすのです。
ちなみにどの空洞が影響を受けるかによって、痛みの場所や種類(額の痛み、目の奥の痛み、頭の前後に広がるような頭痛など)が異なります。
そして起きやすい症状は頭の構造によって異なるため、個人差があります。
2つ目の要因は、脳の血流です。
血液は神経細胞に対して高い毒性をもっています。そのため脳には血液を分離させる仕組みが備わっています。
実際、脳と毛細血管の境目には血液脳関門(けつえきのうかもん)と呼ばれる障壁があります。
血液脳関門があるおかげで、脳感染症を引き起こす毒素や病原体を通さずに、重要な栄養素だけを吸収できるのです。
同様に、脳には血液汚染から身を守る別のセンサーも備わっています。
血管が広がりすぎると活性化する受容体があり、「痛みを与える」ことで私たちに血管の異常事態を報告。
つまり気圧の変化で血管が膨張すると、脳を守る警告システムが働き、頭痛になるのです。
悪天候が近づいたときにできること
では、悪天候による頭痛にはどのように対処できますか?
エリソン教授は、「気圧調整された部屋に閉じこもる以外には、鎮痛薬や充血除去薬で痛みを和らげるしかありません」と述べています。
しかし、何か1つの要因で頭痛が起こることは少なく、大抵の場合は気圧の変化以外に複数の要因が隠れています。
例えば、姿勢の悪さやストレスが頭痛の原因になることもあります。
長時間にわたって収縮している筋肉は、酸素やその他の栄養素を供給するためにより多くの血流を必要とし、炎症の原因となります。
またストレスによって体内のアドレナリンやコルチゾールのレベルが増大すると、炎症が起きて血管が広がり、頭痛が生じます。
ですから頭痛を予防するには、正しい姿勢を保ち、ストレスを軽減させることが大切です。
加えて、悪天候が迫っていると分かったなら、チューイングガムを噛むように強く噛む動作を行うと良いでしょう。
口、鼻、耳を介して副鼻腔の圧力を均一にでき、頭痛防止につながります。
さらにセロトニンやドパミンといった自然の鎮痛剤を増加させることも重要です。
これら神経化学物質は脳に届く痛み信号を遮断し、頭痛を和らげてくれるのです。
そのためエリソン教授は、次のようにアドバイスしています。
「友人とおしゃべりしたり、音楽を聴いたり、好きなことをして神経伝達物質を補給しておけば、気圧差による頭痛の影響を軽減できます」
「天気が悪いときには、愛する人と一緒に映画を見たり、チョコレート(体内でセロトニンに変わる化学物質が含まれる)を食べたりするのも良いかもしれません」
頭痛に悩まされている人は多いです。科学的な根拠を把握していれば、無理をせず適切な対処ができるでしょう。
参考文献
Can bad weather really cause headaches?
提供元・ナゾロジー
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